第3話 こんな言葉に救われました
第6話
<第3話 こんな言葉に救われました>
■登山者の恰好をし、水筒や弁当を広げ山腹で休憩するほかのイラスト。
<ここでちょっと余談>
<冒頭でわたしの病気が作り出した妄想世界は、地獄絵図のようでしたが>
<実は、周りからやたら褒められている幻聴や妄想を抱いたことも少なくありませんでした>
■ほかがハイテンションで浮かれているイラスト。その周りで道行く人々が呟いている。
道行く人々「かわいい~」「すてき~」「天才」「頭いい」など。
■テレビがついていて、それを見たほかがびっくりしている。
テレビ「世界最高の知能だと諸機関が確認し~……」
ほか「私ってそんなに世界から評価されてるの!?」
(→その吹き出しにツッコミ。実際はAIのこと)
<これには自分なりの解釈があり、発症前>
■高校生のほかが号泣しているイラスト。
ほか「誰もほんとうの自分のことはわかってくれないっ」
ほか「私が死んでも誰も困らないっ」
<というふうに、思春期からずっと、誰かに認めてほしいけどそれが叶わない、というジレンマがあったため>
ほか「理想と現実とのギャップを埋めるために、妄想で理想の世界を作り上げてたのかなぁ?」
<なんてことを考えたりします>
<こんなふうに、「自分のことをわかってくれる人がいない」と感じたことがある人は、案外多いのではないでしょうか?>
<自分が期待するほどには、人ってなかなか認めてくれないものですよね>
ほか「人それぞれ、いろんな価値観があるもんね~」
<でも案外気がつかないだけで、ほんのちょっとだけでも、あなたのことをわかってくれている人って、身近にいるかもしれない>
■ほかが監督のコスプレをして、「OK」のプラカードを掲げ、下げた手にもったプラカードには「NG」と書かれている。
<前章では、統合失調症の人へのNGワードをいくつか挙げたので、今回は、病気のわたしを救ってくれたちょっとした言葉や人々を紹介します>
<「あなたは病気のせいにしている」ということを言う人がたくさんいる中、こんなふうに言ってくれた友人がいました>
<テイク1>
■静岡のとあるカフェ。ほかが幼馴染の友人Mとお茶しながら話している。
友人M「えー? あたしはさぁ、なんでほかちゃんって、なんでもこう、がむしゃらにやるの? ってずっと思ってたよー」
ほか「ええっ!? そうなの?」
友人M「そりゃそうだよー。いっつもニコニコしてるし、なんでもがんばるから、もうこれ小学生のときから思ってたよー」
ほかの頭の上にでかでかと<衝・撃>という文字。
ほか「そんなこと言われたのはじめて」
友人Mが、おどけた笑顔から、ちょっと深刻そうな表情に変わる。
友人M「でもそれって、すごく生き急いでる気がする……」
友人Mは再び笑顔を見せる。
友人M「もっと肩の力抜いてもいいんじゃないのー?」
ほかの顔にほのかに赤味がさしている。
<ずっと前から見てくれている人がいたと、肩の荷が降りた気がした瞬間でした>
<テイク2>
<さて、ここでちょっと話を戻します>
ほか「時を戻そう」
<大学時代、一年休学した私は無事復学。病気のため地に落ちた体力で、通学するのがやっとな大学生活が幕を明けます>
■ほかが涙して空に手を伸ばすイラスト。その先にはほかの手を離れ飛んでいってしまった風船が4つ。その風船たちには、こんなことが書かれている。
<憧れのサークル>
<憧れの一人暮らし>
<大学の講義での良好な成績>
<優等生キャラ>
<手放さざるを得なかった理想はいくつも>
<そんな中、とっても貴重なものを得ることもできました>
■大学構内。ほかが友人Nと友人Yに囲まれ笑っている。
<復学後半年経ってようやく友人ができ、ある時、思い切って打ち明けてみました>
ほか「わたし、統合失調症なんだよね」
<意外にもそれは友人たちにとって、遠くの世界の言葉ではなかったようで>
友人N「わたしもじつは、親戚にその病気の人がいて……」
<発症時の症状を説明すると、Yちゃんはこんなふうに言ってくれました>
友人Y「人が自分の噂をしているように感じるんだね。わたしも高校時代、自意識が過剰のときがあって、電車に入ったとたん、みんながこっちを見るとか、そんなふうに思っていたときがあったよ」
<それをきいたNちゃんも>
友人N「その感覚、ちょっとわかるような気がする。わたしも、大学の教室がざわざわしてて、いきなり笑いが起きたりすると、『自分のことを笑っているのかな?』って思ってしまうときがあるよ」
<あの夜、長時間の講義に疲れたあと立ち寄った構内のコンビニで。どうしてあんなにほっとしたのだろうと考えてみると>
■ハートに囲まれたほかのイラスト。
<NちゃんやYちゃんが、病気を「わけのわからない不吉なもの」ではなくて、「自分たちにも理解したり、想像したりすることができる、身近なもの」として語ってくれた、そのことに「ほっこり」のもとはあったのかななんて、そんなふうに思います>
<話は長引いて、ちょっと深い人生観なんかも語り合ったあと、Yちゃんが去り際に残してくれた言葉は、今でもこの胸に大事にしまってあるのです>
Yちゃん「ほかちゃんの病気のことを知れて、よかった」
<テイク3>
<また、とあるカウンセリングルームを訪れたときのこと>
■開放的なカウンセリングルーム。プロの心理カウンセラーの方とほかが向かい合っている。
女性カウンセラーさん「統合失調症を抱えておいでなのですね」
女性カウンセラーさん「ということはやはり、無理はしないほうがいいですね。ストレスには弱いと思うんですね」
ほか「えーっ、わたし、ずっと自分は精神的に強いと思ってました!」
女性カウンセラーさん「それでも、ご病気になられたということはやはり、敏感だったということじゃないでしょうかー」
目からうろこが落ちすっきりした表情のほかのイラスト。
<このときから思うようになりました>
■中学校。上靴をゴミ箱に捨てられたり、黒板に死ね! と書かれて落ち込む中学生のほかのイラスト。
<子どものころ、学校でいじめられていたときは、大人たちに「強くなれ」と言われて、誰も頼れる人がいないのだから、強くなるしかない! とがんばって耐え抜いたけれど>
<もともとストレスに耐性がない人だってじっさいにいて、それは本人の努力でなくて性質なのであれば、努力して強くなるってナンセンスじゃないか?>
ほか「今までひどい言葉や心ない言葉なんてたくさん受けてきたけど、未だにそういう言葉を投げかけらるとイヤだし傷つくよね」
■再び読書を楽しむほかのイラスト。
<自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。
サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。
シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか。 梨木香歩さん著『西の魔女が死んだ』より>
ほか(感涙)「じ~んとくる……!」
ほか「弱くてもいいんだ」
ほか「ストレスに弱い自分の性質にあった働き方、暮らし方を工夫していけばいい」
<今ではそう思っています>
ほか「ただでさえ周りの人に理解してもらえないと思っていたのに、心の病気なんてもっと理解不能なものをしょいこんで。もういやんなっちゃう」
<ずっとそんなふうに思ってきた自分が、十年以上にわたる闘病生活の末、気づいたら>
■ほかの今の職場。ほかが仕事をしながらひらめいた表情
ほか「あれ、最近病気の症状や不都合をほとんど感じない……」
<イケメン俳優と美人女優のあいだに生まれた娘さんや、自分と同年代の著名人>
<大学時代病気のためなにかとがんばることができなかったわたしは、身近にいる、がんばって輝いている友人たちまでもがうらやましく、自分の小ささと比べては落ち込んでいました>
<でもふと気づいたら>
<病気が回復して読書もじゃんじゃんできるようになり、好きな小説を創作しているとき>
■ほかが自宅のパソコンで小説を打っている。満足げな表情。
ほか「こんな才気あふれる文章書けるなんて……わたしって天才?」
(この吹き出しにつっこみ→校了後はいつも思う。見直す前の校了直後だけね)
ほか「あれ」
ほか「妄想でこんなに楽しい世界描けるなら……」
ほか「芸能人の娘さんとも、有名スポーツ選手とも」
ほか「仕事がんばってきらきらしてる友達のあの子とも」
ほか「もう誰ともわたし、人生代わりたくないかも」
<社会人、大人、男性、女性、母親、父親、妻、夫、娘、息子、その他職業など>
<人間が社会で求められる人物像を追及する時代から、人間にあわせた生きやすい社会をつくっていく時代へ>
<そんな変革が今、求められているのかもしれません>
統合失調症でも大丈夫 ~病気が教えてくれたこと~ ほか @kaho884
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