第2話 病気の症状よりつらいこと
第5話
<第2話 病気の症状よりつらいこと>
<病気発症前の私は、元気いっぱいの高校生でした>
■高校の制服姿で目にやる気の炎を宿したほか。その下に特徴が箇条書きで書かれる。
<・優等生
・何事も根性でなんとかなると思っている
・人間強くなくちゃいけないと思っている
・西洋文学愛読>
<それが、大学を一年休学することになり、薬でどうにか妄想等を沈めていくと、こんなふうになりました>
■ほかがカメのように布団にくるまり、口からよだれを垂らしながら眠っている。
特徴が箇条書きで書かれる。
<・よく寝れるね、と周りが思うほど一日中寝ている(妄想等で著しく脳が疲弊しているのと、薬の副作用のため)
・本の内容が頭に入ってこない。唯一読めるのは漫画「ちびまる子ちゃん」
・薬の副作用で食欲増進。20キロ増量
・薬の副作用で排尿が自分の意志でできなくなる>
<一年後、どうにか大学に復学しても、授業の内容が高校生のときのようにすらすらと頭に入ってこず、理想とはほど遠いキャンパスライフに何度も>
ほか「このままじゃダメだ!」
<と自分を叱咤しました>
(→この吹き出しにツッコミ:でも自分の意志では変われない)
<「やる気のない自分はだめだ」「怠け者になってしまった」そんなふうに思われている全国の統合失調症のみなさんに、私は声を大にして言いたい>
ほか「それ、あなたのせいじゃありません!」
<じっさい私も、やる気が出ない自分を否定して苦しんでいるとき、こんな言葉をかけられ>
友人A「精神科の先生って、なんだって病気って言うからね」
友人B「病気のせいにしているだけじゃない?」
<病気の症状と同じくらい、もしかしたらそれ以上に、これらの言葉はしんどかったです>
■ほかが重い石を頭に負って、ぶつぶつ呟いている。
ほか「いや、一番がんばりたいのは本人なのに……」
ほか「がんばりたくてもがんばれないからつらいのに」
ほか「がんばりすぎて病気になったとこあるのに」
<周囲の協力もあり、十年以上かかって無事寛解までこぎつけた今の自分が、当時の自分に会ったとしても、こんなふうに声をかけると思います>
■未来の大人になったほかが学生のほかに語りかけている。
未来のほか「やる気が出ないのはあなたが病気のせいにしているのではなく、じっさいに病気のせいなんだよ」
■ほかがパソコンで仕事をこなしたり、何冊も本を読んでいるイラスト。とても活き活きしている表情。
<その証拠に、回復した今、こんなにばりばりやりたいことができて、毎日楽しいから>
<世間の心の病気への偏見に関して言えば、これも無視できません>
■大きな石にほかが押しつぶされている。石にはこう刻まれている。<統合失調症と言えない問題>
ほか「これはムズかしいよね」
<休学中、少し回復してきてアルバイトの面接に行ったとき>
ほか「休学の理由をきかれて、統合失調症って答えたよ」
母「なにぃぃっ!?」
母の怒っているイラスト。
母「あんた、精神病の人なんて誰が雇いたいと思うっ? いらんことは言わなくていいんだよっ」
ほか(……別に恥ずかしいことしてるわけじゃないのに)
<恥ずべきことをしているんじゃないのに、恥じ入るように病名を隠さないといけない。そのことが納得いきませんでしたが、母がとうぜわたしが心得ているだとうと思ったこの価値観は、残念ながら世間にはずいぶん浸透してしまっているようです>
<また、別の時には、アルバイトの面接に合格してから、職場の人に病気のことを相談すると>
■ほかのかつての職場。
職場の上司「そういうことを言うなら面接の段階でいってほしい。そうでなければ言わずに通すべき。病気を仕事ができない言い訳にしないでほしい」
<とっさに言い返せませんでした>
ほか(病気だから仕事ができませんって言いたかったわけじゃなくて、病気でもうまくやってく方法を相談したかっただけなのに)
<この病名をきいただけで嫌煙してしまう人もいるため、世間で統合失調症だと明かしづらいのです>
<今はこう思います>
<統合失調症は社会に公表すべきではないと言った上司の方は、その意見を、「厳しい言い方になってしまうけれど」、と前置いていたけれど>
<統合失調症だということを相談することと、それはやめてくれとはねつけること>
<果たしてどちらが、現実に即していないでしょうか?>
<個人的には、こう思います>
ほか「もうさ、100人に1人ってくらいだから、社会は心の病といっしょにやってくしかないよね? かかわりあいませんっていうのは通用しなくなりつつあるんじゃない? 他者と関わらないのが不可能なのと同じくらいに」
<やはりそれなら、病気の人はいるものとして、共存の方法を考えるしかない>
(ここに吹き出し→ウイルスといっしょ! Withトーシツ!)
<ただ一概に>
■ほかがハチマキを巻いて燃えている。
ほか「統合失調症ですと言える社会にしよう!」
<と言ったところで、人々の偏見が根強いのは、それがでてくる温床が社会にあるということであり>
<現代社会自体が、精神疾患と決して相性がいいとは言えないという事実もあります>
■ビジネスマンやキャリアウーマン、ショップ店員さん等が、必死に働いているイラスト。そこには「役立たず」「使えない」という言葉が飛び交う。
<何かを生産して対価を得る。成果を出していかなくてはいけない資本主義社会で、生産性が極度に低くなる「心の病です」と言えないのは、ある意味当然>
(ここで吹き出し→決してそうあるべきではないけど)
■ほかが文学の世界に浸りながら、なにやら考えているイラスト。本の表紙には『変身 フランツ・カフカ』や『モモ ミヒャエル・エンデ』と書かれている。
<資本主義でありつつ、価値観は生産至上主義にならないように、強調していくしかないのかもしれません>
ほか「働きもののビジネスマンが、虫に変身したとたん、家族から厄介払いされちゃうお話があったよね……」
ほか「ミヒャエル・エンデは『誰かとわかちあうのでなければ、持っているだけで破滅してしまう富がある』なんて、深い言葉を残してる……!」
<実際、生産性や能率ばかりが幅をきかせない世界というのもたしかにあります>
■ほかがリラックスした表情でたくさんのハートに囲まれている。ハートの中にはそれぞれこう書かれている。
<友達にグチをきいてもらってほっこり>
<芸術を味わってじんわり>
<誰かと何気ない会話ができて気持ちが斜め3度分上向きに>
■とある職場。ほかが職場の人に相談を切り出している。その人が笑顔で言葉をかけてくれている。
ほか「ちょっと、精神的な病気の話で……」
職場の人「奥の部屋で話きくね」
<必要なのはシンプルに、優しさだったりする>
<そんなふうに、思うのです>
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