第37話

「?な、に」




ぼそ、と呟いた何かを問い返すと、彼はあたしの腰に腕を回して引き寄せる。


「お腹空いた」


鎖骨の下に頬を寄せ言うと、あたしを軽く持ち上げ、膝から下ろして自分は立ち上がった。





ご飯食べるために用意するのかな、と思って立ち上がろうとソファに手をついた時。





一度立った健が屈んだかと思えば、







あたしを抱きかかえ。







「わ、あ」


背中と膝裏に回された腕の感触に、びく、と身体を強張らせれば、健は自分の首に腕を回すように首元を見せる。



「え、え、ご飯食べるんじゃ」



「うん、食べるよ?」


「じゃあ何でわざわざ…。あたし歩ける、よ」




それを聞いてすぐ傍で曇る表情。




「もっとちゃんとした泣き顔が見たいから、俺が今から食べるの――分かるよね?」




「たけ――…ンっ」





健は無理矢理に、何も言わせないようあたしにくちづけした。



真っ赤になって力が入らなくなってしまうあたしの首元に、また頬を寄せる健は。



低い声で、こう囁いて。





「さっきから気になってるんだけど。真実のじゃない香りがする」







「……あっ、それ多分、鬼嶋くんの」





「へえ?……じゃあ今日は他の男物の上から貰おっか、真実」





「……へ…?」











「"王子様"。甘い夜を頂戴しても?」



















――――……









(いいえ、"魔王様")





(当然貴方が 一番 甘いのです)
















「覚悟してね」



Fin.

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kissの反対は?【完】 鳴神ハルコ @nalgamihalco

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