焼肉での密談
「ーー。以上がここ数日の報告です!」
「ありがとう、助かるわソーン」
「はいっ!」
いつもの定期報告。レガート様がラッテ様の御屋敷にいらっしゃり、こうして私,ソーンのお話を聞いてくださいます。
私は冒険者でお仕事をしていますが、他には商人に弟子入りしたり、騎士団に入ったり、私達のお仕事は多岐にわたるのです!
「そうね。最近、貴女から見たカリアの様子はどうかしら?」
「ん〜、魔王討伐が直前に控えているためか、いつもより緊張している感じです。私は、カリア様は強いので大丈夫です。って言ってるんですけど、あんまり効果が無さそうなのが残念です」
後少ししたら師匠は恐魔大陸へ行き魔王と戦う。
ソーンは何かあった際の備えとして、ここフルーク聖王国の首都セレニティに残る様、レガート様に言われている。
どうせなら師匠とラッテ様と戦いたいのに。
「カリアは努力家であって、得た結果に過信する事は無いのよ。それに重責を背負うのは似合わないわ。難しく考えるのは私だけで良いわ。......そう思うわよね?ラッテ先輩?」
そう言いながらレガート様は開いた扉に身体を向けて声を掛けました。
「肌寒いけど天気は晴れ。良い朝ねレガート。子供達も今日も朝から元気だ」
「......この間近隣に教会から引き抜いた子よね?行動する前に一声欲しかったのだけど?」
「駄目。早く行かないと助けられなかった。ソーンもいたの。おはよう、昨日はよく眠れた?」
「はぁ。まぁ良いわ」
「はいっ!ソーンは元気です!!ラッテ様っ!」
レガート様に礼をしてラッテ様に抱きつきにいく。
私より少し高いラッテ様はとても抱きつきやすく、拒まず優しく抱擁を返してくれるから好き。
「飽きないわね。毎日してるでしょ?それ」
「ん?ソーンは住まいを教会から変えたから、最近は会う方が少ない」
「そうね。先輩が次々子供を拾ってくるから手狭になるのよ」
「......子供だけじゃ無い」
「そこじゃないわよ。それに、大人は仕事を斡旋してるし給与に見合う宿も言ってあるわ」
「ぁ、あの。朝から。その」
怖いです。怒ってるわけじゃ無いのはわかってますが朝から怖いです。
「そうね。怖がらせたわねソーン。2人の顔も見れてし私はもう戻るわ」
そう言って立ち上がり扉に向かわれたレガート様は振り返りこう言いました。
「あっそうだ。2人とも今日は新しい店に行くから夕方は食べないでね。場所は後で伝えさせるわ」
言う事は言ったと立ち去って行くレガート様。
抱き合っていた私達はお互いの顔を見合わせ首を傾けました。
⚪︎⚪︎⚪︎
「すっ、すっごいです!」
「っ!」
眼下に並べられるは特上のお肉達!冒険者として食べに行くお店では食べられない高そうなお肉です!骨がついてない!
「ふふっ、喜んでくれて良かったわ」
「ソーンなんかが来ても良かったのですか?」
「問題無いわ。この店は、まぁそうね。この間カリアが美味しいお肉を食べたい。って言ったから建てたのよ」
「えっ!?そんな理由で!?」
「そんな訳無い」
しかねないのがこの王女様なんです!
「あら?半分くらいは本心よ?理由なら、先に仕入れの搬入ルートを作っておきたかったのよ」
「先?ですか?」
「えぇ、これからこの国は障害が減ってより発展するわ。人が集まり物が集まりお金が回るの。そんな中、今まで通り国内の管理で満足してたら勿体無いわ」
「なるほど?」
「個人の誰かが動くより、私が動いた方が安全と信頼になるの。こんな事に騎士団は動かさないけど、それでも道の整備や触れ込みはするわ。後はやりたい個人が後に続く。私はそれを選別すれば良い」
「つまり、呼び水としてのこの焼肉屋なんですね」
レガート様は趣味と実益を兼ねていらっしゃる上に遊び心もある。
私では到底出来そうに無いし、する事もない仕事です。
「そんな事より食べてお話ししましょう?その為に2人を呼んだんだもの」
「はいっ!もう涎が出そうで、っぷ」
「拭くから、こっち向いて。よし」
「さ、いただきましょう。私も実際に来るのは初めてなのよ」
ラッテ様にお口を拭いてもらい、いざ!
⚪︎⚪︎⚪︎
「美味しいです〜。頬が落ちそうです〜」
「本当ね。金額はもう少し抑えたいけど、味は想定より評価が上がるわ」
「んふ。子供達にも食べさせてあげたい」
「構わないけど、一食で子供達の賃金が消し飛ぶわよ?」
「それは、困る」
お肉を手前に用意された黒い板で焼き、用意されている香辛料を好みで掛けて食べる。
焼かれた物が提供される今までと比べ大分異質な光景だけど、新鮮で楽しく味も良い。
普段の食事でどれも適量しか食べないラッテ様の手が止まらない。甘味の時もそうだったけど、好きな物とかちゃんとあるんですね。安心です。
「先輩もソーンも気に入ってくれて良かったわ」
「これはみんな好きになる。でも、んむ」
「そう。......でもね。安い値段にしたら荒い冒険者とか礼儀の無い人が来るでしょ?人は別途で雇う手筈だけど、荒らされるのは困るし、何より自身で肉を焼く、焼かせるって構造に客層が合わなくなる」
「大丈夫。......わかってる」
「はぁ、わかったわ。それは後で話しましょう」
口を拭いたレガート様が私達の顔を順に見て悪い笑みを溢しました
「今日はね。貴女達がカリアの事をどう思ってるのか。どうしたいのかを聞くための会なのよ」
「っ!?!?」
「なっ!!?」
なんとっ!?
「カリアと婚姻するのは私よ?だけど私は寛大なの」
えぇ、それは。そうですね。わかってます。
「......」
「それでね、私は貴女達なら良いかなって思えるほどには、ね?」
っ!。でも私は弟子、ですし。
そ、そもそも王女の婚約される方です。聖女のラッテ様ならまだしも、私なんてただの冒険者なんです。
「ありがとうレガート。だけど、大丈夫。私は、」
「教会寄り?先輩を悩ませているのはそこかしら?ならそこは考えなくて良いわ」
「......」
「先輩の血に流れているモノが何であれ人である事に変わりは無いの。私は昔の事より貴女を信じるわ。ソーンは?」
「わっ、私は。......師匠、カリア様の事は好きです。救ってくれて居場所をくれて強さをくれたんです。でも、」
「でもじゃないわよ。引っ込み思案が過ぎるでしょ。貴女達2人。」
そうは言っても私は私なんです。御三方の背を追っている今ですら、たまに怖くなるのに。
わ、話題を逸らして
「あ、あのこの話はカリア様は?」
「知らないわよ。カリアが何か面倒な事を言い出す前に私で進める予定だしね。それにカリアが知っててこの場にいたら話しづらいでしょう?」
うぅ。私は。でも、カリア様の事は好き。なんです。出来れば一緒に居たいですし、御三方の近くにずっと居たいです。
「顔赤くして俯いちゃった2人とも。今すぐとは言わないけど、結論は早めに出してね。カリアも若い方がいいに決まってるんだから」
またも悪い顔をされたレガート様。このお二人は学生の頃か、っ!食事中ですっ!!!
っ!!!!!!
今日で1番顔が赤い気がします。......横を見ると耳が赤いラッテ様が真下を向いてます。
〜〜〜〜!!!
「さ、まだ食べれるわよね?カリアも居ないし沢山食べるわよ」
そして、今日1番の笑顔でお肉を食べ始めたレガート様でした。
まおたお 外伝 久瑠璃まわる @saito0915
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