長編小説を書く方法

雨宮 徹

長編小説を書く方法

※最初に断っておきますが、カクヨムコンテストなど、公募の条件を満たすためだけに字数を稼ぎたい、という方は対象外です。作品に直接関係のない描写をして文字を羅列すれば済むからです。


 また、ここでの長編小説とは10万文字以上を指します。




 一回でも長編小説を書いた経験がある方は、プロ小説家の大変さが分かるかと思います。どうやれば、長編小説をあんなに何作も書けるのか。カクヨムで趣味で書くにせよ、10万文字というのは大きな壁です。



 しかし、簡単に書ける方法があります。乱暴な言い方をすれば、イベント(強敵が立ちはだかるなど)を増やす、登場人物を増やすことです。今回はいかにして長編が出来上がるのか、論理的に説明したいと思います。



 小説を書く方は当然「起承転結」をご存知かと思います。ミステリーなら次のように分解できるでしょう。


起:登場人物の描写、事件の発生

承:捜査を進める

転:事件解決の糸口が見つかる

結:事件が解決する



 これだと、具体的にどう事件解決への糸口を掴むのか、不明瞭ですね。これをさらに分解するとこうなります。あくまでも一例です。


起:別の事件が起きる

承:捜査を進める

転:事件を解決する

結:解決した事件からヒントを得て、大きな事件の糸口を掴むきっかけになる



 このように、起承転結はさらに小さい起承転結から成り立っています。つまり、これを繰り返せば自然とエピソードが増えて、人物描写に深みが出たり、ストーリーに奥行きが生まれます。



 この現象に名前がないと不便なので「フラクタル」と名付けます。フラクタルとは数学者が提案した幾何学の理論の名前です。


 分かりやすい例を出します。世界地図には海岸線があります。しかし、実際に海辺に行くとさらに海岸線は入り組んでいます。そして、さらに細かく見ると小さな石などから海岸線が成り立っています。



 つまり、長編小説を書くには、フラクタルを活かすのです。起承転結を細かくして、さらに小さい起承転結を作る。さらに細かく見ていって……。このような感じです。



 このフラクタルを繰り返すうちに、自然と新しいキャラクターが登場するはずです。主要人物が3人ならば、フラクタルにも限界がありますから。



 長編小説を書く場合、起承転結の文字の割り当てはこのようになります。あくまでも一例です



起:2万文字

承:5万文字

転:2万文字

結:1万文字



 先ほどのミステリーの例なら、転の2万文字をさらに細かい起承転結にすると、ざっくり次のようになります。


起:4000文字

承:10000文字

転:4000文字

結:2000文字



 起承転結の繰り返し、フラクタルが大切なのです。仮に10万文字の長編小説を書くならば、1話2000文字として、50エピソードが必要です。数字だけ見ると途方もなく感じますが、フラクタルを利用すれば、少しは気持ち的に楽になるのではないでしょうか。もちろん、フラクタルを利用するにはプロットをじっくりと練る必要があることは言うまでもありません。




 まとめに入ります。

・起承転結はさらに細かい起承転結で成り立っている。

・小さな起承転結を書くと自然に登場人物が増え、人物描写が丁寧にされ、キャラクターが生き生きとする。

・フラクタルを利用すれば、自然とストーリーに深みが出る。



 こんなところでしょうか。皆さんが長編小説を書く一助になれば幸いです。

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長編小説を書く方法 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

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