街路樹は一年草の夢を見るか?
yuki
街路樹は一年草の夢を見るか?
“貴女の音が好きだった”
白風に吹かれながら月夜を眺め思いを馳せる女の子
“あの娘”の奏でる音色が好きだったから。
弦を弾いた瞬間に桜が舞ったかの様な優しい音色。
だからこそあの娘に関わろうと思えたのだろう。
あの娘に、手を伸ばそうと思えたのだろう。
◇
小学校三年目の花風吹く日のこと。
♩♬♩――――
鳴り渡るお筝の音色。
その音に惹かれ音の元へと歩いていく。
着いた先にはドアがあった。
〚音楽準備室〛
そう書かれた札を見て
サビに入ったのだろう躍り狂う様な荒々さを出すメロディー。
余りに痛くて、辛くて、楽しくて、、、。
綺麗だった。
誰が弾いているのかすら分から無い。
ただ純粋にもっと聞きたいそう感じた。
◆
来る日も来る日も同じ場所で音を聞き続け、小学校三年目の夏風煽る日に
「えっと、、、どうしたの?」
「え、、、?音葉?」
「そうだよ?、、、なんでこんな所で正座なんてしてるの?修行?」
優しく、まるで水の様な透明感のある消えてしまいそうな声を持つ少女。
小柄でまるで雛の様な女の子の名前は
「修行じゃないよ。ただ、、、。ただ、音楽にお筝に釣られて歩いていたら何時の間にか座っていた、ただそれだけだよ。」
目を逸らし、言霊を吐く。
「ふぅん、、、?まぁ良いや!!って事はさ?楓花も音楽好きなんだよね?」
純粋な真っ直ぐな言の葉。
言の葉の全てがキラキラと輝いていた。
あまりの眩しさに彼女の目は悲鳴をあげた。
楓花そう呼ばれ鼓動が跳ねるのを感じた。
当時の
ただ嬉しさだけが背を押した。
「まぁね。」
コミュニケーション能力を兼ね揃えていないので短文で済ませる
「じゃあさ!!一緒に演奏しようよ!!」
演奏なんていとも簡単に言ってくれる。
でも、
そして奏でられる合唱曲。
踊るメロディー、歌う声。
当時は高音を練習していなかった為高音が全くと言って良いほど出せなかったのだ。
親戚の叔母さんに頼んでボイトレだってして貰っていた。
でも
それが小説だ。
小説と言えどそんな分厚い物では無く、小学校の図書室に置いている様な厚さの本だった。
本の感想を言いあったり、お勧めの本を教えあったりしていた。
その中で
何時しか“お筝の奏者”としての
そして芽生えた
“恋”だ。
“初恋”だ。
大きく育った
そんな時、あの娘の笑顔を見て居られると信じて疑わなかった
◆
“音葉ってなんで
小学校四年目の木枯らしが吹き付ける日に、女子を集め女王的存在の女の子
アイツとは
この地域では名の知れたお家の孫娘であり、
この地で一番古い家系と言っても過言ではなく、区画整理により家が少し前進したくらいだ。
別に
ただ、祖父が地主なのだ。
父も母も農家の生まれで、その周辺の殆どの土地を所有していた。
そして家賃と称して入る金を株にまわしぼろ儲け、、、なんて事をしていたそうだ。
そして、
皮肉なことに“
多くの大人から金を要求され、胡麻を擂られ、利用され、行き着く先は地獄だった。
“え?そんなの金以外無くない?”
嘗てのしんゆう
その言霊は
「ア゙ア゙ッ゙!」
足が竦み、手が震え、脳に血が回らなくなる。
まるで“あの日”の悪夢を見ている様な感覚に陥る
そんな時1つの言の葉が舞い降りる。
「違うよ!!!楓花は私を受け入れてくれた子なの!!そんな風に言わないで!!!」
何時もの透明感のある声に芯があった。
そして
首輪の恐怖も
その
1つの人が3つの人になったのだ。
そして続く虐め。
“
そして、
「どんな手を使ってでも守らなければ、、、。この
◆
小学校五年目の花風吹く日の昼休みにとある男の子を呼び出した。
「
「え?何怖いって、、、。」
「僕が音葉の人格を否定するから、それを否定して欲しいんだ。」
目には曇りが垣間見えるが、
氷菓子の様に冷たい声。
そのオーラに渉と呼ばれていた男の子は思わず後退りする。
「え?、、、は?、、、お前ってさ、音葉の事好きなんだよな?、、、なんでそうなるんだよ?」
分からなくて当然だ。
これは
でも
「、、、君なら分かるだろ?」
「!?、、、あ、俺が音葉に告った事言ってるのか?」
「ッ〜!!、、、なんでお前は何時も何時もこうなんだよ!!」
吐き捨てられた言霊に
「何時も何時も自分は後回しで!!自分が分からなくなってんのに!なんで、、、なんで!折角蘇った感情を閉ざそうとしてるんだよ!!」
叫び。
でもそれは
「別に要らんし、、、。虐めで心を病んで僕の様になって欲しくないから、潰れるのは僕だけで良いから、
何事からものらりくらり躱してきた
「分かった。ただ、、、死ぬなよ。」
「ありがとう。明日決行するよ。」
◆
そして迎えた
「すぅ、、、。音葉ってさ、メルヘンだよな。音葉の夢見る少女感が嫌いなんだよなぁ、、、。」
猛毒だ。
だか、
そして、打ち合わせ通り
「いや、だってそうだろ?この歳で“空を飛んでみたい”だぞ?メルヘンにも程があるって。」
嘲笑った。
そして、鼻を啜る音と共に走る足音。
「、、、これで僕も
内心は吐きそうな程苦しんでいるというのに。
皮肉なものだ。
「渉、ありがとう。ごめんな、こんな嫌な薬頼んで、、、。」
偽りだろうが澄んでいた。
その美しい瞳に、達成感に溢れた瞳に、
それもその筈だ
祖父母の期待に応え続けたのだから。
成績だって常に上位で、スポーツだって平均以上だった。
ただ失望されて、期待されなくなってからは何事にもやる気が起き無くて“劣等生”を演じていた。
そう、
主役、脇役、悪役。
皆も少なからずそうだと思う。
自分の人生は自分が主役で他の人は脇役。
ただ、
だから、誰かの為に生きたい。
それが出来ないのなら、
「、、、。色々考えてるんだろ?家の事、将来の事、好きな事、、、とかさ。焦らなくて良いと思うし、思い出したら日記にでも書けば良い。今無理に思い出して、苦しむ必要は無いんだよ。大丈夫。、、、でも何時か、何ならお前の好きな小説の中だけでも良いから、音葉と仲直りしてくれ。」
「まぁ、、、。何時か、な。」
そして、その日は終了した。
◆
季節が移り校庭の花壇にはパンジーが芽吹いていた。
「誰だよ!!ヒナを殺したの!?」
校庭に轟く怒号。
「さ、最後のお世話係は
麗麻の焦りの声が聞こえた。
「は!?俺じゃないし!!ってか証拠は!?」
「私が1人で行った時に見たもん!!」
「は?お前らだろうが!!」
何故“お前”ではなく“お前ら”と言ったのかだ。
1人ならば普通単数の“お前”と言うべきだ。
なのに複数形の“お前ら”を使った理由はたった一つ。
「ああ、、、!なるほどぉ!麗麻お前、ヒナを殺したな?」
ヒナの為に休憩の全ての時間を費やし、司と一緒に面倒を見ていた。
だからこそ司の怒りは尤もで、
その中でならハッタリくらいは許されるだろう。
「はぁ!?私じゃないし!!そもそも私は皆と行動してたし!!」
“皆”それは、その言霊だけは吐いては行けなかった。
その言霊を吐くことにより
「は?麗麻さ、さっき1人で行ったって言ってたよな?」
淡々と
「君さぁ、、、そんなクソみたいな嘘付かなくて良いだろ?おもんないって。、、、まぁ良いや。ってな訳で麗麻率いる
続けて言霊を吐き捨てる。
だから、
だからこそ背筋の凍るものがあるんだ。
慌て出す
そして導き出した
「音葉が最後だよ!!」
梨沙が禁句を言い放つ。
虐めが悪化しない様に
「お前それマジで言ってんのか?なぁ!音葉が全部悪いんか!?なぁ我!?ええ加減にせえや!!どんだけ人様に迷惑かけりゃ気ぃ済むんや?このくっだらん話にな関係ない奴まで小一時間座らされとんねんな?わかるやろがい!!もっかい聞くぞ!誰が悪いんや?」
この時の
だからこそ、苛立ちが増したのだ。
「先生。アンタ見てたんだろ?なぁ?僕のヒナを殺したのは誰だ?」
それを
だからこそ恐怖に苛まれた。
「、、、殺したくてした訳じゃなくて、ただ不注意だったんだろうから、許してやってくれないか?」
先生は火に油を注いでしまう。
「「は?」」
「んだよそれ!!不注意だったら殺して良いんか!?人を殺せば“刑法”の下に裁かれるのに、動物は無いのか!?此処は“常識”を教える場なんだろ!?んならコイツらの買ってるペット全部殺してやるよ!!!」
それを見た
「その必要は無い。この場で
「辞めなさい!!!」
先生の怒号が運動場に響く。
「僕は悪くないだろ!!悪いのは
「埋葬しよう、、、。」
先生の声が、合金のように重くのしかかる。
「「はい、、、。」」
2人で手のひらサイズの
「司、輪廻転生ってあると思うか?」
「あると思う。、、、根拠なんて聞くなよ?」
「分かってるよ。どうせ説明できないんだろ?」
ニヒルな笑みを浮かべながら
「うっせぇ!」
他愛もない会話をしながら
だが向かう途中に泣いている女の子の声がした。
そして、涙を拭っているのは“
「、、、良かったな。音葉おめでとう。」
「、、、。しんどすぎだよ。、、、ッ!」
最近までは虐めなんて気にも止めなかった
首輪、暴力、大人の目。
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
「、、、寒っ、、、。早く行こ。」
家から出て直ぐの2,3段の階段を駆け下りると、
「ヒイラギって年中咲くんだね〜。」
家の入口とも言える場所に植えられたヒイラギという花を見て、
寒風が
ただ何時にも増して震えていた。
ガァッ!ガァッ!!
「うわっ!、、、烏って縁起悪い〜。今日は何かあるの〜?」
またも
そしてとあるマンションに着いた。
「真緒ちゃん来たよ〜。持って来てって言われたやつ持って来たよ。」
“首輪”を握りしめる
「じゃあ、“家族ごっこ”を始めようか!」
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
「ッア゙ッ!、、、ハァッ!、、、ハァッ!、、、ハァッ!、、、。」
「楓花?、、、楓花!?」
駆け寄る
◇
「あれから、色々あったな。」
「合宿で正規ルートじゃなくて山奥に行って、イノシシに出会しかけて、司が慌てまくってたり、合宿で司と僕が付き合ってる疑惑が出たり、別の場所を教えられて迷子になったり、、、合宿だけで色々ありすぎじゃね?、、、それに、修学旅行で虐められたり、地元のテーマパークみたいな所で司と蜜柑味のアイス食べたり、迷路したり、喧嘩したり、、、僕は楽しかったのかな?」
小学校時代の事なんて思い出したくも無かった筈なのに、
過去と向き合うと決めたからだ。
新たな好きな人の為に、隣に居ても恥ずかしくないように、何より自分の為に見なければならない。
「“過去”と言えば、、、司から昔折り紙貰ったんだよな〜、、、。何処行ったっけ?」
そして、鍵付きの引き出しから紫色の折り紙が出てきた。
「あった〜〜!!」
折り紙を開くと、、、。
好きです。
とだけ、書かれていた。
「、、、え?、、、は!?、、、卒業式の日に司に馬鹿野郎って言われたのは、、、これか!?うわぁ、、、悪いことしたなぁ、、、。」
“鈍感野郎”と言われていた理由を
「ってか、か○恋を元にしたなら2017年だから小3やないか!!、、、え?ショウサン、、、?9歳???え?今16だから、、、7年前!?えぇ、、、。ヤバっ!?」
かと言って今の
「グループLimeから引き抜いて謝っとくか、、、?」
あったっぽいです。
「いや、今更掘り返しても迷惑か、、、。」
だからこそ、足枷にはなりたくないのだろう。
「、、、辞めとこ。」
今は好きな人が居る。
自分のセクシャルを否定する為に消えた。
なのに、
まだ、諦められないのだ。
まだ、セクシャルを否定できないのだ。
まだ、あの音が好きなのだ。
もう諦めちまえ。
逃げるな。
意気地無し。
色々言われた気がした。
うっせぇよなんて言えないな、なんて思ってた。
「“貴女の音がずっと好きです”」
これが今の
街路樹は一年草の夢を見るか? yuki @after_the_snow
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます