情感溢れ、切なさ零れ、泣きたくなるほど愛おしい……

小説とは奇跡を育めるモノだと僕は思っています。

それは構成上設定された事とは違うし、練り上げ懸命に想像出来る部分を越えて、現実に書き進めなければ決して出会えない領域です。僕は小説とはそういう想定外の深みを生み出せるはずだと信じています。こんな事を書くと、プロットを綿密に構築されている筆者様からお叱りを受けてしまうかも知れませんが、僕はこちらの作品を拝読し、そう感じました。

まず、こちらの物語にご興味を持たれた読者様に最初にご注意申し上げたい事は、「数話離脱」をされない方が良いと思う事です。これは私の主観で正直に書きますが、最初の段階でヒロインに対し筆者様は、わざと読者が共感を持ちにくい形で描いております。

図式として「良い人ヒロイン」が「卑劣な周囲」に陥れられ、のちに「ざまぁ」するという王道ラノベがお好きな方はお好みとは違い、思わず「離脱」されてしまう可能性があります。でも、それは損をします、いや、凄い損をします。

元々、筆者様はとても素直で無垢な言葉を使われる稀有な書き手様でございます。その繊細で温かい言葉は、人物の心象、その機微を文芸くさく不必要に装飾せず、ありのまま見事にすっと捉えてみせます。

僕はこちらの物語を読み進めていくうちに、愛を知らないお姫さまが愛を知るという物語の図式の中で、もっと深く、もっと広く、もっと大切で、もっと愛おしく、そしてあまりに……切ない、そう訴えくる気がしました。それは強く想いを込めて書かなければ、決して辿り着けない領域だと僕は思います。

お勧め致します。

筆者様の想いが読み進めれば読み進めるほど、物語と深く深く重なり、美しく結晶化されてゆくとても愛おしい物語です。

皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)


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