天真爛漫なヒロイン。
手にしている異能の使い方を知らず、混乱を招いて罰を受けて外界(第七階層)へ……。
そんな始まりの今作は、かぐや姫の物語をベースにしたSF要素ありの物語。
かぐや姫といえば誰もが知っている物語だと思いますが、今作は、その物語の概要を崩すことなく、一人の少女が愛を知って伸びやかに成長する様が描かれています。
タイトルこそ、『愛を知らないお姫さまが愛を知るまで』となっていますが、素晴らしいのはヒロインが愛を知ってからの精神的な変化だと思います。
愛を知ることで、自分に与えられていたものの意味を知り、周囲への想いも変化していく……。
そのたおやかで切ない様子は、作者様の想いのこもった和歌でも表現されています。
ラストも必見。
愛に満ちた新しいかぐや姫の物語を、ぜひ読んで頂きたいと思います。
凛月は第一階層の魂の管理者であったが、色々あって第七階層第八エリアに落とされてしまう。そこは、平安朝の日本の世界。凛月改め月姫となった主人公が、さまざまなひとたちと出会い、愛とはなにかを知っていく物語。
平安の世。赤子として転生したうえに三月で美しく成人した凛月は月光る姫、月姫と呼ばれるようになる。月姫は異能力を使い、さっさと任務を終わらせて帰還しようと思っていたが、異能力である『魅了』がまったく効かない桂城帝と出会ったことで、次第に気持ちが変わっていく。
序盤はどことなくSFベースな【竹取物語】なのですが、どんどん作者さまの色に染まっていく完全オリジナルストーリー✨
ふたりの恋の行方もそうですが、どんどん高まっていく気持ちの変化や月姫の成長を楽しめるのも◎
平安時代があくまでも軸なので、和歌を詠むという風習も物語の所々でみせてくれるお洒落な演出。
ネタバレするともったいないので、ぜひぜひ和風ファンタジー&恋愛要素が好きな方、興味のある方は読んでみてください♪
新たなかぐや姫伝説爆誕です(๑•̀ㅂ•́)و✧
小説とは奇跡を育めるモノだと僕は思っています。
それは構成上設定された事とは違うし、練り上げ懸命に想像出来る部分を越えて、現実に書き進めなければ決して出会えない領域です。僕は小説とはそういう想定外の深みを生み出せるはずだと信じています。こんな事を書くと、プロットを綿密に構築されている筆者様からお叱りを受けてしまうかも知れませんが、僕はこちらの作品を拝読し、そう感じました。
まず、こちらの物語にご興味を持たれた読者様に最初にご注意申し上げたい事は、「数話離脱」をされない方が良いと思う事です。これは私の主観で正直に書きますが、最初の段階でヒロインに対し筆者様は、わざと読者が共感を持ちにくい形で描いております。
図式として「良い人ヒロイン」が「卑劣な周囲」に陥れられ、のちに「ざまぁ」するという王道ラノベがお好きな方はお好みとは違い、思わず「離脱」されてしまう可能性があります。でも、それは損をします、いや、凄い損をします。
元々、筆者様はとても素直で無垢な言葉を使われる稀有な書き手様でございます。その繊細で温かい言葉は、人物の心象、その機微を文芸くさく不必要に装飾せず、ありのまま見事にすっと捉えてみせます。
僕はこちらの物語を読み進めていくうちに、愛を知らないお姫さまが愛を知るという物語の図式の中で、もっと深く、もっと広く、もっと大切で、もっと愛おしく、そしてあまりに……切ない、そう訴えくる気がしました。それは強く想いを込めて書かなければ、決して辿り着けない領域だと僕は思います。
お勧め致します。
筆者様の想いが読み進めれば読み進めるほど、物語と深く深く重なり、美しく結晶化されてゆくとても愛おしい物語です。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)