謁見

数日後、勇者とその妹がついに神都へ到着したと知らせが入った。

父上から召集がかかり、僕は父上と共に謁見の間へと向かった。

静寂の中、父上が玉座に腰を下ろし、僕もその隣に控えた。間もなく、扉がゆっくりと開き、二人の子供が護衛の聖騎士に伴われて入ってきた。


二人ともまだ幼い。勇者である兄は、何か決意に燃えるような鋭い目つきをしている。

妹の方は、兄の少し後ろに隠れるように歩きながらも、勇気を奮い起こしているのが伝わってくる。どちらも茶髪で美しい顔立ちだ。


「よくぞ魔物の襲撃を乗り越え、ここまでたどり着いた。貴殿らの故郷での不幸、無念であったな」


父上は続けて尋ねた。


「さて、名は何と言う」


兄が深く頭を下げた後、低くはっきりとした声で答えた。


「…僕はレインです。そして、妹はサラといいます」


当たり前だが、勇者の書での名前と一緒だ。あまりにも通常の展開とは違うから、もしかしたら似ているだけで別の世界なのではないかと心配していたが。


父上は二人を見つめた後、言葉を続けた。


「ふむ…そうか。衣食住はこちらで用意するが、他に何か望むものがあれば言え」


父上の申し出に、レインは少し俯き、そして次第に怒りを含む表情で顔を上げた。


「力を…力をつける環境をください」


その声には、子供とは思えない重々しさがあった。言葉を口にするたびに怒りが滲み出し、同時にそれを抑えているようだった。

父上はその様子をじっと見つめ、「それは復讐のためか?」と尋ねる。


レインは数秒沈黙した後、真剣な顔で首を横に振った。


「いえ、もう何も……失わないためです」


その言葉とレインの様子に、僕の胸がざわついた。勇者の書でのレインはどこか楽観的で、逆境にも笑顔で立ち向かう明るい性格の持ち主だった。

しかし、目の前の彼はその面影がまるでない。怒りを飲み込むような、深い悲しみと強い決意の中にいる。

これも物語の流れが変わった影響か。


「…いいだろう。聖騎士見習いの訓練に参加することを許可する。だが、しばらくは体を休めろ」


父上の声には温かさと同時に、彼の覚悟を受け止めたような響きがあった。

レインは深く頭を下げ、妹のサラも父上の慈しむような視線に小さく会釈した。

こうして謁見は終わり、護衛の聖騎士たちに導かれて二人は退室していった。






謁見が終わり、僕は自室に戻るとベッドに倒れ込む。


「あかん、レインの性格がめちゃくちゃ変わっちゃってる」

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悪役のボスキャラに転生してしまった 塩ハラミ @ji3ba3

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