第5話 師匠
山の看板で立ち尽くす、セロ。
道らしきところは見つけたが、いかんせん進む気にはなれない。
「かえりたい…。」
そもそもセロには修行のことが伝えられていない。
加えて5歳という幼い年齢である。精神的にも成長途中だ。泣かずにいるが褒められて良いはずだが、その褒めてくれる相手は誰もいないのだ。…人以外は。
「こんにちは。セロ」
「こ…こんにち…は。セロくん」
背後に二人の女性。背は170cm 程だろうか。
普通は身長の高さがファーストインパクトだろう。
ただ、その二人にはそれよりも強い印象、インパクトがあった。
「兎の耳…?」
まっすぐと立っている兎の耳。顔は人間と変わらない。
とても綺麗な顔立ちの二人である。
「初めまして、いい夜ですね?月が落ちてきちゃいそうなほど満月です。」
「は、初めまして…。」
屋敷以外の人と話すのに慣れておらずおどおどと返すセロ。
「私はエル。兎人(とじん)です」
そう答えたのは白い着物を着たスレンダーな女性。
白い髪と白い着物がよく似合っており美しい。
「ラビ…です」
続けて話すのは黒い着物を着たグラマラスな女性。
全体的に肉付きが良いが締まるところはしまっている。
可愛らしい印象がもてる。
「今日から私達二人は貴方の先生、つまり師匠です!」
「で…す!」
ついにセロ、全てを理解する。
「帰りたいよ〜〜〜〜〜!!!」
奇しくも恐恐山での人の遠吠えはセロが初であった。
「泣き言はあとで!まず屋敷に案内しますね」
エルが話す。
「ここからかなり歩きますが頑張りましょう!」
「が…がんばって…」
セロ初めての山登りが始まった。
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こんにちは、セロです!
山登りって大変ですね。斜面の角度がどんどん上がっていくのが疲れます。今なんてほぼ90度…え?壁じゃん。
むりむり。登れないですよ、師匠(笑)。
意外と冗談言うんですねー!あの、顔笑ってくれないと冗談が成立しな、え、そのポーズなんですか。その上に球を投げるかのような構え。僕を投げ繋いで登りきる?
ははw二段構えのギャグでしたか!いやー、びっくり!とりあえずその手のひらに乗ればいいんですね?
「月まで飛ばしてあげますよ。」
そう三日月のよう口を曲げて笑ったエルさんはとても美しくぅぅううう゛う゛うぁああぁあ゛あ゛あぁぁ!
「な、ないす…ジャンプ…!」
「どうも…ラピさん…」
申し訳なさそうにはにかむラピさん。かわいい。
「意外と楽しかったでしょう?」
「えーと…」
「楽しかったでしょう?」
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セロが投げられた同時刻。
アルマ国の中心にあるアルマ城で会合が行われていた。
王と騎士の一対一の話し合い。
「勇者なしで、魔王を殺す?」
「はい。」
そのように提案したのはこの国の象徴であり、最強の人
かの者がこの国に所属しているだけで他の国への牽制となる。
名を────。
「なぜ4大妖精に頼らず人の国を作れたか?ははは、
当たり前のことを聞くんだな。あいつがいたからだよ。『アリス』がいたから、人の国ができたんだ。」
書籍"1000人の賢者に聞いた建国の歴史"の抜粋。
勇者なき時代 @koma123koma
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