最終話 ラピスラズリの散る宇宙に
それから僕は、あまりに美しすぎる星空を一時間、見続けた。
世界の真理を知ったような、人間の在り方を知ったような。一度は諦めた、ひたすらに憧れた夢の果てを見つけたような。そんな気分に浸りながら星空を見続けた。
天体望遠鏡を覗き続ける僕に、話しかける人が一人。
「こんなに長い時間見続けられるなんて、本当に星がお好きなんですね。」
どうやらこの天文台の管理人さんらしい。
「ここの望遠鏡があんまりにも綺麗に見えるので、つい。」
僕より十五歳以上は上だろうか。でもとても綺麗な女性だった。
眠たげな二重まぶたから覗く瞳は、まるでラピスラズリの様な深い色をしている。きめ細やかな肌に、鼻筋が通ったそれは、それは綺麗な人だ。
「満足いただけたなら何よりです。」
そう言って微笑む女性。一瞬見惚れそうになったが、
「はい、ありがとうございました。良い経験が出来ました。」
と返事をした。
すると女性が、
「いえ、こちらこそ。ありがとうございます。私もとても幸せでした。」
と言っていた。
どうしてか、彼女から僕に対してもお礼を言われたが、不思議と違和感はなかった。
それどころか、僕はずっとあの女性のそばに居たくなった。初めて会ったはずなのに、もう離れたくないと思ってしまう。
たった数分しか話してないその声が、もっと、何度でも聴きたいと思った。
僕は、父さん達と天文台を後にした。
車のミラーには管理人さんが手を降っているのが見える。
肩にかからないくらいの綺麗な黒い髪の美人な管理人さん。
姉ちゃんは猫の話ばかりしているし、母さんはもう眠そうにしている。
「どうだった、天文台。見たかった星は見れたか?」
父さんが僕に尋ねる。
「うん、みつけたよ。」
ラピスラズリの散る宇宙に 尾谷金治 @haya-punk
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