第19話 今日の宇宙店主
皆さん、どうも宇宙店主です。
今回は何やら真剣なセバスチアンの作品ですよ。
ヤハリ宇宙年齢が若いだけあって、地球の文化を吸収する速度が速いですね。
余計な事をこの地球で覚えなければ良いのですが..。
『ヒキコモリのススメ』 セバスチアン
赤ん坊に生まれて、
何にもシバラレル事なく
スイスイと成長してみる。
人間がジドウテキに私のクチまで、タベモノやスイブンを運び、
カワイイカワイイと周りから愛されて、アイとは何かを知る。
そしてたまに
「ダーダ」
「バブー」
などの赤ん坊の定番のセリフを吐く。
サービスの一環。
コレを言っておけば、とりあえず間違いはナイ。
が、
本当はしゃべれるのだ。
人間のゼッチョウキをここで味わう。
時間が経って、私は自立させられる様になった。
二本足で歩き、
二本のハシを器用に使い、カレイの煮付けなどを食べさせられたりする。
本当は、洋食の方が好みなのだが。
すでに赤ん坊時代からはミライに進行してるので、
簡単にワガママは通らなくなっている。
背中にはランドセルを背負わされ、小学校に通わされる。
そこで一人遊びだけではなく
知らない人間共と、戯れる事を強制させられる。
鬱陶しい、
という感情しかナイ。
この辺で、人間という職業を選択した事を後悔する。
やらなければいけない事がオオスギル。
が、
しかし、
私の人生は回転し始めたばかり。
人生の美学とは、一生懸命生きる事なのだと、道徳の授業で習う。
ウソだ。
ラクに生きる方がイイに決まってる。
私が今居る場所は、既にランドセルではない。
手さげカバンを持って通う所だ。
その高校内で
他の人間達は、キキ迫る勢いで勉学に励む。
人生の分岐点が、もうそこまで迫っている。
そう感じた。
私はまだ労働という事をしたくなかったから、
更に上に進んだ。
私が赤ん坊の時から、面倒を見てきた二人の人間は喜んだ。
私の中では、赤ん坊の時で意識はすでに止まっている。
だから別にどうでもよかった。
ハタラキたくないだけだ。
アア、
いつまでも人間に抱かれて、美味しいご飯をわざわざ口まで運んでくれて、
フカフカの布団で眠り続ける。
あの時に戻りたい。
夢見がちの四年間の日々を送った。
ある日、大学から退去命令が通告された。
早すぎる。
もう四年間が終わったのか?
クソッ。
とうとう私にも、労働しなければならない時がやって来た。
その建物の人間から
もう教える事は何も無い、
と言われたのだ。
ハタラキナサイ。
余計なお世話だ。
私は属する会社が決まり、
二人はお祝いに、背広というものを買ってくれた。
それと同時に、私の二人の人間は
私の事を家から追い出した。
何故?
二人はもう独り立ちする時期だからと、
私を小さな一部屋、
小さな台所、
小さな風呂、
小さな二階建ての、
アパートの一室に追いやった。
初めての労働というのは、
とても疲れるという事実。
なんにも楽しくない。
過去の私が通り過ぎて来た、学生時代の時は
徹底して独りでいる事を貫いた。
独りでも生きて行ける事を知っていた。
今はチームワーク。
アア、モウイヤだ。
イヤになって、初めて労働を拒否をした。
別に彼等は何も言わなかった。
シゴトガデキナイ、ツカエナイニンゲン。
カゲでいつも言われていたらしい。
人間はオモテが好きな様でいて、
実はカゲの方が好き。
別に何を言われても良い。
他人だから。
かと言って、私にはお金を必要だ。
タベモノ
ヤチン
コウネツヒ
いや待てよ。
コウサイヒ..は必要無い。
トモダチは居ないから。
私はイヤイヤ、イロイロな労働をした。
そしてすぐに逃げた。
イヤだから。
その内、どこの労働にも引っかからなくなった。
この頃になると、
赤ん坊の時に戻りたいと
小さな部屋の中で切に思い込む様になる。
試しに、
「バブーバブー」
「マンマ、マンマ」
と懐かしの台詞を言ってみたりしたが、
赤ん坊に変身する様な事は、
無かった。
一体どれ位、この小さな部屋に籠っているのか分からない。
外出するのは、コンビニエンスストアーに、タベモノを求めに行く時だけだ。
今に始まった事ではないが、
私は絶対に他人と目を合わせない。
無駄な会話もしない。
ある日、誰かが部屋の戸をノックする。
私に?
私には誰もいない筈。
それは建物の管理人だった。
手紙の催促状を何度も送ったのだ、
興奮気味。
知る筈もない。
郵便受けを全く見ていないのだから。
とにかく、
とその人間は言い、
退去して貰います。
私に言った。
出て行くその日の朝、あの懐かしの二人が私に会いに来た。
管理人さんが連絡してきたんだよ。
引っ越しというには物足りない量を、三人で分散して持つ。
肩をすぼめて歩く二人の後を追って、
私もそれを真似して
肩をすぼめて歩く。
協調性は必要だから。
何本かの列車を乗り継ぎ、
私の駅に着き、
更に
そこからバスに乗り、
赤ん坊の時の想いが詰まった、懐かしい建物に着いた。
二人は私が戻ってからというもの、
余り喋ってくる事は無かった。
遠慮しているのかも知れない。
私もそれで助かった。
話したくないから。
ヤッタ。
私は懐かしの部屋に戻って来た。
もう労働する必要はない。
好きな時に
漫画を読んで
ゲームをして
食べて
オナラをして
寝る。
二人は私がまた自立するのでは?
思っているのかも知れない。
アマイよ。
それはナイ。
赤ん坊の時から望んでいた夢が
ちょっとだけ時間が掛かった。
けど叶った。
ユメは叶うもの。
赤ん坊の時は人間におぶられ、
何不自由の無い至福の時を過ごした。
しかし私の体は、
もう随分と巨大化してしまった。
けれど、
私は今日も赤ん坊になって
ウトウトと、
うたた寝しようとしている。
私が戻って来たこの六畳一間、
母親の様に私を優しく抱いてくれる。
私は長い時間を掛けて戻って来たのだ。
母の子宮の中に。』
ハイ、皆さんお疲れ様でした。
長かったですねえ。
セバスチアンも中々やりますね。
地球人でも無いのに、地球人の奥底の心情を良く表現していますね。
宇宙世界を見渡しても、ここ地球くらいですからね、『ヒキコモリ』と云う職業が成り立って居る惑星は。
所詮これは他宇宙人事ですから、この宇宙店主、何の感情も湧きません。
しかしこの『ヒキコモリ』を絶滅させる方法が、実は二つだけあります。
もし皆さんの中に『ヒキコモリ』が居たり、周りにコノ職業の方がいらっしゃれば、どうぞお試し下さい。
先ず一つ目が、自分の家を宇宙船仕様に改造をする。
因みにコノ宇宙書店は、移動型の宇宙船でして。地球上は勿論の事、宇宙空間、何処でも飛んで行ける事が可能です。
デスから『ヒキコモリ』が帰って来る前に、其処から飛び立って引っ越しをするのです。
この住宅の改造は、近々皆さんにもご紹介致しますが、冥王星の近所に小さな星を購入して、『ノブナガモータース』と云う宇宙船修理工場を営んで居る、ノブナガさんと云う方が担当してくれます。
しかし問題は、そこまで住宅を運ばないといけない事なんですよねえ。
宇宙船が無い場合は?
安心して下さい。
現在の地球人の技術でも、充分に家の引っ越しが可能な方法が在ります。
それは丸太の棒を、何本も住宅の真横に並べて、其のママ反対から住宅を押して動かす方法です。チト少し地球時間は掛かりますが、確実です。両親を当てにして戻って来た『ヒキコモリ』は、自分の生家がそっくり其のママ消えている事で、途方に暮れるでしょう。
この手法は、大昔のエジプトで実際に盛んに行われていた輸送方法です。
因みにコノ方法を地球人に教えたのは、この宇宙店主なんです。
そのお話は又今度、と云う事でお願いします。
「ウぅン、ちょっと体力的に自信が無いよお!宇宙店主ぅ」
ハイ、分かりました。
では次の二つ目の解決法とは、自分(達)も『ヒキコモリ』に転職をする。
『ヒキコモリ』の地球人は、実は“生”に対して物凄く執着して居ます。よりよく無事に、何事も無く、楽に長生きをしたいから自分の部屋に篭る訳です。
自分の身内の地球人が『ヒキコモリ』の状態で、彼らが一番心配して居る事は、
“もし自分(達)が死んでしまったら、『ヒキコモリ』の面倒は一体誰が見るのだ?”
面倒を見てくれる方々の地球人寿命の事よりも、自身で在る『ヒキコモリ』の身の安全を心配しますからね。
執着してみましょうか?今居る『ヒキコモリ』と一緒に。
自分(達)も『ヒキコモリ』になり、全ての事を放棄して自分(達)の部屋に『ヒキコモリ』してみて下さい。
ここからは根気比べですが大丈夫です。皆さん方が必ず勝ちます。
『ヒキコモリ』は暫くすると、我慢が出来なくなり、部屋からトウトウ出て来ます。
生きる為に。
良いですか?ここからが本番です。
部屋の中に最低限の食料と水分を、『ヒキコモリ』になって部屋に入る時に持ち込んで下さいね。持久戦になりますから。非常食にはハッピーターンとミロがお勧めです。
初めの内は、どうせ直ぐに出て来るだろうと鷹を括っていた『オリジナル ヒキコモリ』は、もう誰からの援助も無くなった今、積極的にオモテに出て仕事を探しだします。そこで焦らないで下さいね。そこで部屋から出たら、又、以前の状況に元通りです。出るタイミングを間違わないで下さいね!
もしこれが失敗してしまった地球人の方は、『宇宙店主の☆☆☆地球人相談ブース。』まで御一報を。
では。
宇宙店主
今日の宇宙店主 宇宙書店 @uchu_tenshu
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