ヒミツ。
西之園上実
ヒミツ。
僕は小学生。
でも、ヒミツはある。
自分が本当は宇宙人の侵略から地球を守る正義のヒーローだという。
私は中学生。
でも、ヒミツはある。
自分が今週アイドルのオーディションを受けにいくことを。
俺は高校生。
でも、ヒミツはある。
自分の学力が本当はこの高校ではいっぱいいっぱいだということを。
私は今日から社会人。
でも、ヒミツはある。
本当は入りたくなかった会社だということを。
うーんと、ぼくはきょうからようちえん。
でも、ヒミツはある。
うちだとおこられるしちゃいけないことをいっぱいしてみようと。
これはヒミツだ。
いえば、だれかがとめる。
絶対に言えない。
これはヒミツだ。
いまから、あの山にある洞窟奥深くに、ワシの全財産を隠す。
あの人とあそこで今日会う。
誕生日プレゼント喜ぶかな?
もう限界だ、明日このボタンを押す。
あいつが嫌いだ。
あの人が好き。
秘密はその人の考えが不足しているということからじゃない。
聞き取れる耳が不足しているからこそ秘めやかに、埋もれたままでいる。
思いは重くも軽くも。
軽率で弾む。
浮けば離れ、萎めば近づく。
シークレットサービスってなに?
いくつもあるトップシークレット。
シークレット・ウェポンだったとしても使いどころによるだろ!
シークレットブーツって恥の上塗りじゃね?
秘すれば花。
花なんだからもう主張してる。不遜な言葉だわ。
なら掘ればいいのか。
探し当て、ユンボでも持ってきて手当たり次第、そこらじゅう。
ヒミツを暴けば野暮になる。
野暮なことはよくない。そう、マイナスだ。決まってる。
危うく、けれど使い勝手は抜群。
そうくくってしまえば、どうとも成る。
「この指輪もそうなんだろうな……」
歩き、進む道をたくさんの人とすれ違う。
電光掲示板がオレンジ色の文字を滝のように流し落とす。
大きな液晶ビジョンからは滑舌のいい声が無責任に声を鳴らす。
行き交う人たちにもヒミツはある。
勝手に、自由にすればいい。
過程があって結果がある。
それだけ。
ヒミツ。 西之園上実 @tibiya_0724
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