エピローグ:結末
取り付く島もないとはこのことだった。
……まあ、でも、セレスの言うことに反論するつもりは起きない。実際、そうなのだろう。アイリスはユイシアを傷つけ続けて(ルートによっては容易く命すら奪おうとするほどに)、私もユイシアから交友関係を奪い取った、ようなもの。私にその気は無かったのは確かだけれど、結果としてそうなってしまった。
「……」
思わず吐きかけたため息を飲み込む。
セレスは、あれ以降も私を避け続けているらしく、遭遇することは全く無い。たまに見かけはするものの、大抵ユイシアの隣で笑っている。二人の関係は、以前にも増して密接というか濃厚というか、言うなれば二人の世界、という感じだ。他人の入り込む余地はない。それは私だけでなく、かつてユイシアを慕っていた攻略対象達ですらも。
「あの二人、本当に仲がいいよね」
「……そうだな」
「フォードセンパイがオレに同意するなんて珍しい」
「……他に表しようが無いだろう。彼女たちは」
ユイシアの婚約者だった、ケイ・フォード。
ユイシアを可愛がり続けた、ニック・アスタリア。
設定が過去形になってしまった二人は、私の傍にいる。
きっと、今からでもアイリスの言動を真似れば、この世界は再び運命を変えるのだろう。彼らの好意はユイシアへ向いて、アイリスは破滅の道へと進んでいく。
……やっぱり、それは御免だ。したくもない行動をわざわざ真似て、死にたくはない。
「アイリスセンパイは……落ち込んでる?」
「何かあったのか」
「ううん、何もないよ」
だから、安牌を取る。ユイシアに交友関係を返してあげられない。
でもどうせ、返したところで最推しにはどうやっても嫌われるのだから。ならば穏やかな生活くらいは享受させてほしい。
罪悪感と嫉妬心に何とか蓋をしながら、私は窓から見ていた二人から目を逸らす。それでも、視界の端で亜麻色の髪は揺れたまま。
……諦めが悪いとはこのことか。嫉妬心からアイリスの所業を選ぶなんてことにはなりたくない。数度瞬きを繰り返すと、今度こそ魅惑的な亜麻色は視界から消え失せた。
……妹より
ヒロインの姉に転生したらピンポイントで推しに嫌われていた話。 真嶋 @m-j-m
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