第44話 禍転じて福と為すー2


「セカイ・ヴァン・ノクターン殿!! ご入場!!」


 壮大な音楽と、荘厳な王城の玉座の間に俺は招かれた。エルフェンオーブ共和国の代表をはじめ、アナスタシアやフィーナという王族関係者や元貴族含めてこの国の代表が俺を迎えた。


 そして俺の入場と共にオルドも立ち上がり、俺の前まで歩いてきた。それは対等の証。


「セカイ殿、いや……セカイ。私は、そして我が国は、救国の英雄として貴殿を永劫に忘れない」

「大袈裟だな。こんな大層なことまで」

「お前はそういうのだろうな。だがこれは我らの気持ちだ。頼むから受け取ってくれ」

「いいだろう。もらおう、褒美とやらを!」


 うなづくオルド、するとアナスタシアが何か豪華な箱を持ってきた。そこには。


「我が国の国宝。世界樹の首飾りだ。遠い昔、千年を生きるエルフですら遠い遠いずっと昔。この世界を守護したと言われる大樹を削り出して作ったものと聞いている。この世に二つとない秘宝だ」

「母が付けていたものです。ですがきっとあなたが持つべきかと」

「いいのか? こんな秘宝を」

「セカイ、聞いていると思うが私の妻。そしてこの国の女王だったオリヴィアは予言の魔導書を持っていた。そしてその最後の1ページにはこう書かれていたのだ」

「予言?」


 オルドとアナスタシアはうなづく。

 

「草木の王、世界を蝕む闇を払い、無限の祝福を与える。それが母の予言でした」

「あぁ、今回の予言で確定した……私はセカイこそがこの王だと思っている」

「俺が王……か。ただの悪徳領主なんだがな……」

「受け取ってください。セカイ様!」

「頼む!」

「…………わかった。ありがたく頂戴しよう」


 するとアナスタシアが俺にその首飾りをかけた。


「魔導書を開いてみるといい」

「ん、あぁ…………!? これは……」


 俺は魔導書を開き、そして魔力量を見る。

 そこには、俺の魔力回復速度も書かれている。


「2倍……だと?」

「はい。世界樹の首飾りは付けているものの魔力回復を倍化します」

「おいおい、そんな秘宝。返してくれといってももう無理だぞ?」

「安心しろ。これはこの国の総意だ」


 そしてオルドとアナスタシアは、拍手した。

 と同時に全員が惜しみない拍手を、俺に送る。

 心からの感謝がのった拍手だった。


「セカイ・ヴァン・ノクターンをこの国の永久名誉国民とする! 一月の制限はない。いつでも何度でもこの国に来て欲しい。我が永遠の友よ」

「いいのか? めっちゃくるぞ」

「いくらでもこい。お前に抱かれたいエルフが列をなして待っている。看病していた時のお前はかっこよすぎて孕むとか戯言を言っていたぞ」

「まじで!?」


 他国の男は、一月以上滞在できないエルフェンオーブ。

 しかし、俺はこのハーレム王国永住許可を手に入れた。よし、とりあえずあと一月延長で。

 

「つめた!?」


 後ろで待機していたレイナから氷のような視線と、冷気すらも感じた。いや、ほんとに氷の礫が飛んできてたわ。

 

「ごほん、ありがたく」

「それと最後に」

「まだあるのか……」

「アナスタシアをやろう」

「はぁ?」

「お慕いしております。セカイ様……あの燃えるようなキスから。わたくしはあなたから目が離せません。わたくしはもう身も心も全てあなたのものです。メロメロです」


 アナスタシアが俺の手を握る。

 オルドをはじめ大臣や他のエルフ達もうんうんとうなづいている。

 やばいぞ、このままなんやかんやでくっつけられそうな雰囲気だ。これはしっかりと断らねば!


 すると、アナスタシアがまた俺をサワサワしながら耳元で囁いた。


「幸せな家庭を作りましょうね。もちろん子作りも……たくさん」

「うん! たくさん、作る――ぐぇ!?」


 レイナが俺の脇腹に一撃入れて前に出た。


「申し訳ありませんが、セカイ様はリベルティア領の領主ですので、二つ返事という訳にはいきません。一度持ち帰らせていただきます」 

「あら、レイナさん…………なるほど、そういうことですか」

「なんですか。アナスタシアさん、ニヤニヤと……不快です」

「レイナさんって……ふふ、セカイ様が好きなのですね。それはもうメロメロに」

「なぁ!? なにを!? そんなわけないでしょう、こんな顔だけのクズ!!」

「どうも、顔だけはいつも褒められるクズです」

 

 アナスタシアがぐいっとレイナに近づく。

 アナスタシアの巨乳がレイナの貧乳に乗った。


「ふふ、お父様。婚姻の話は一旦保留でお願いします」

「ん? いいのか?」

「ええ、ですが諦めるわけではないですよ。むしろ燃えてきました」


 アナスタシアは、にこっと舌なめずりし、ハート型をした猟奇的な目で俺を見る。


「わたくし、寝取るのも好きだし、得意です。とても興奮するので…………じゅるり」


 俺は怖くなったので脱兎のごとく、その場から逃げた。

 式典? 知らん。俺の貞操の方が大事だ。それに堅苦しいのは疲れた。


「ということですので、失礼します」

「お父様! 私も行ってまいりますね!」

「お、おい! まったく式典だというのに…………慌ただしい奴らだ。だが……彼らしいな。では、解散!!」


 そんな感じで、式典は終わった。

 色々不敬だったと思うが、もう疲れたしな。



 そして夕方。

 俺達リベルティア領組は、領地に帰ることにした。


「もう帰るのか、セカイ。もっとゆっくりしていけばいいのに」

「悪いが、領地には子供たちを残している。さすがに長居し過ぎた」


 王都の門で、多くのエルフ達が俺達を見送ってくれている。 

 王都中のエルフがいるのではないかと思うほどだ。

 そして、オルドは前に出る。


「本当にありがとう、セカイ。君はこの国の英雄だ」

「大げさな。こちらこそ、使節団の派遣感謝する」

「なに、それぐらい。これからも国交を結び、強固な関係を築いていこう。困ったことがあれば何でも言ってくれ」

「あぁ、そっちもな」


 実はエルフの王国――エルフェンオーブ共和国から使節団がリベルティア領に来ることになった。

 その数は20人ほどだが、皆農業などに詳しく、麦やトマトといったこの世界にすでにある種などと共に技術提供をしてくれるらしい。

 よかった。うちの領地は実は農家出身の奴がいないのである。なので、効率的な畑の作り方や、栽培方法など色々教えてくれるとのこと。


 そしてオルドは手を前に出した。


「友よ、また会おう」

「あぁ、必ず」


 熱い握手を交わし、頷く。

 そして俺達はエルフェンオーブ共和国を後にした。


「「セカイ様!! どうもありがとうございましたぁぁぁぁ!!!」」


 多くのエルフ達の感謝の声は途切れることなく、俺達を送り出してくれる。


「では、出発いたします! さようなら、お父様!!」

「なんで、お前がこっちなんだ? アナスタシア」

「もちろん、セカイ様についていくためです。私の知識は使節団としても有効かと!」

「セカイ様、この女は危険です。入国を拒否しましょう」

「ははは! セカイ様。英雄色を好むと言いますからな。側室の一人や二人。男の甲斐性というものです」

「ソンさん! さすがです! わたくし、正妻なんておこがましい! 愛人! いえ、ただの性のはけ口で問題ありませんので!」

「問題ありすぎるだろ……まったく」


 俺は深いため息を吐いた。梃でも動かなそうだし、王政は廃止されたとはいえ、仮にもアナスタシアは王族だし……。


「お姉ちゃんを頼みますね、セカイさん!」

「娘を頼むぞ、セカイ!」


 そして、にっこりと笑顔で俺を見るアナスタシア。

 レイナを見るとため息を吐きながら仕方ありませんねと頷いた。


「……馬車馬のように働かせるからそのつもりで」

「はい! 夜通しできます! 体力には自信がありますので! 馬みたいに調教してください!」

「もはやお前がセクハラ親父にすら見えてきたわ」


 俺はため息をはきながら少し笑った。

 そして、王都に背を向け、リベルティア領の方を向く。


「……では、帰るぞ、お前たち。俺達の領地に!!」

「「おぉぉぉぉ!!」」


 こうして、俺の少し長い遠征は終わり、リベルティア領に帰るのだった。

 まだまだ俺の領地は発展していない。

 これからやりたいことはまだまだあるんだ。

 リベルティア領は、これからもどんどん発展していくだろう。


 そしてゆくゆくは、寝て過ごす毎日を送りたい。

 俺はスローライフが送りたいからな!














あとがき。

はい、ということでここまで読んでくださった読者の皆様。大変にありがとうございます。

残念なお知らせですが、ここでこの物語は完結とさせていただきます。

あと10万文字ぐらいは書いてたんですが、これ以上続けるのは厳しいという判断でお蔵入りです。理由は、異世界、農業、スローライフ。自分なりに勉強しながら書いてみましたが、どうやらまだまだ修行不足だったこと、残念ながらランキングが伸び悩んだこと。あと自分はやはり現代のバトルが書きたいということ。です。

それを再度実感できる作品だったので、それはそれでよかったかなと思います。

ここまで読んでくれた読者の方には申し訳ありませんが、この一応はきりの良いところで完結として、おそらくは数日後にこの小説は削除されると思います。(私の勝手なポリシーで満足いく形で完結できなかった小説を時間を割いてくれている読者様に読ませたくはないと思っているので)




それでも、セカイたちの結末だけちょこっと。



ドワーフ王国との交流などを経て、どんどん成長するリベルティア領。

そして遂に、最終戦争――帝国と種の存続を賭けて戦っていたのは魔族と呼ばれる種族だった。彼らは生きているだけで魔素を生み出す存在。

不毛の大地は、彼らが生きた跡の土地であり、元は肥沃な土地だが、生み出された魔素によって枯れ果てた。

魔族は生きるために、住む場所を常に変えていき、そして今住んでいるところも枯れ葉ててしまったので、次は帝国領土に移住しようとして、戦争になっていた。


帝国の皇帝は言った。

この地は人間のものであり、この世界を蝕む魔族は悪であると。


魔族の王――魔王は、言った。

私たちがこの世界を蝕む病だということはわかっている。悪であることもわかっている。

それでも私たちも生きている。

たとえこの世界の未来を食いつぶそうとも、今を私たちは生きている。


話し合いでは決して解決しない最終戦争は、10年続きお互いに夥しい数の死者を出した。

だが特異点――セカイの率いるリベルティア領のメンバーが魔王討伐に挑む。

勇者として。

しかし、セカイは魔王を討伐など考えていなかった。


Tier1の植物――世界樹の登場によって世界中の魔素を正常化し、魔族の生きながら世界を蝕む性質を終わらせられると思ったから。

レイナやファナに伸ばしたように、その手を魔族にも伸ばすため、魔王を説得するための戦いに挑む。

その試みは成功し、魔族と人族は未来へ向かうため手を取り合った。

セカイが撒いた種を、世界中に一緒に撒いて。

世界を再生する。

そして戦争は終結し、奴隷も必要のない世界が訪れた。

世界中の奴隷も解放し、争いに使っていたエネルギーは全て生きるためへと向けられた。


永遠の祝福をもって、この世界を救ったセカイ。

やっとやることがなくなって、遂にスローライフを送ることに成功した。

と思ったが、想像以上にやることは多く、まだまだスローライフは送れそうになかった。


そんな忙しい毎日のとある日のこと。 


「セカイ様。各国からセカイ様とのお見合いの話がきています。断るのも面倒なので、そろそろ実を固めてはいかがですか? 今や世界最高のお金持ちになってしまったセカイ様なら誰でも使命すれば思うが儘です。さっさとその劣情をぶつける可哀そうな相手を見つけてください」

「誰でも使命すればいける?」

「えぇ、いけます。間違いなく。セカイ様の命令を断れる人はいないでしょう。残念ながら世界最高の権力者ですから」

「じゃあ、お前で」

「…………はぁ?」

「何を呆けている。セカイ・ヴァン・ノクターンが命じているんだぞ。お前は俺と結婚しろと。俺はお前が好きだ。レイナ」

「ちょ、ちょっと待ってください。ちょっと……」


 そしてセカイは、顔を隠すレイナの手を握って、その指に指輪をはめた。


「俺の命令だ。お前の答えは一つだろ?」

「…………イエス・マイマスター。わ、私も……好きです」

「よっしゃぁぁぁ、デレたぁぁぁ!!」

「うるさい、バカ!!」


 そんな最後の一ページ。


Fin







以上です。

せめて最後まで完結に話させていただきました。

本当は書きたかったんですけどね……。申し訳ない。


それでもここまで楽しめたよ! って方へ。

良ければ下の作品を応援してくださると嬉しいです。

今最も力を入れている作品ですし、めちゃくちゃ面白いです。


タイトル:

転生祓魔師・白虎夜虎~平安から続く名家に転生した俺は、赤ちゃんの頃から努力して世界最大の呪力量を持つ最年少特級祓魔官に認定されました~


https://kakuyomu.jp/works/16818093088176689190


私の最も得意な現代ファンタジーバトルの作品となっております。

本当はずっとこちらを書きたくて、2年前ぐらいから書いてた作品ですね。


現代に再度転生した少年が、現代に蔓延る魔と戦う物語。こちらはバトルメインで、私が好きな熱く、そして勧善懲悪のヒーロー展開をたくさんいれた内容となっております。


このような形で、しかも宣伝までして申し訳ないんですが、この結末は自分なりには精いっぱい頑張った結果ではあり、この小説を書くためにめちゃくちゃ農業勉強したぐらいです。たぶん、ペニシリン作れる。

と、長くなりましたがよければ次作品も応援よろしくお願いします。


最後に、もう一度。ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。





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悪役貴族に転生したら、農業を無双できる生命魔法が使えたので、快適なスローライフを送りたい。~不毛の大地に追放されたけど、チート作物が便利すぎて、美少女秘書達と幸せに暮らせそうです~ KAZU @kazu-ta

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