第6話 【幕間】劉ちゃんの墓参り

劉秀美(りゅうひでみ)ちゃんの享年は17才。彼女は超有力華僑である劉家のお嬢様で俺の後輩で初恋の恋人、高校一年の秋に白血病を発症して約一年半後、彼女は香港の病院で力尽きた。


(画像)

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093079521746612

【背が高い後輩の劉ちゃんは、彼氏持ちのくせに処女だった】

https://kakuyomu.jp/works/16818093077403214913

?「久しぶりに来たが、この辺りも変わらんのう三月くん」

「あんたが前回ここに来たのは1ヶ月前だ。変わる訳ないだろうが。ボケたのかジジイ」

爺「そうだったかの?カカカ」


とある日曜日、劉ちゃんの月命日。

いつもの墓参りに、俺に車椅子を押させて参入してきたのは…。


俺が劉ちゃんと知り合って10年が過ぎた…と言うことはこの人との付き合いも10年になる訳で…


爺さん…超有力華僑であるりゅう家に於いて最上位に存在する御大。かたやこっちは爺さんの気まぐれで身内扱いされ続ける日本人。


…だけど


10年の間に俺たちの付き合いも変わった。

…すなわち、お互いに全く遠慮が無くなった。


爺「この間、とても悲しいことがあってのう…聞いてくれるかの?」

「…俺に関係無い話ならな!」

爺「それは最後まで聞いてから判断して欲しいのう」

「…その言い方、嫌な予感しかしないんだけど!」


嫌だなあ…この爺さんが、こーいう言い方をするときは大概が頼みごとだ。

しかも、劉ちゃんのお墓の前って…。


爺「みん家を知っているかのう?」

「…うちに最も近しいと言って良い家だね」

爺「そう…実は秀美の母親は明家から嫁いできている」

「…そこまでは知らなかった」

爺「明家には、秀美の従姉妹いとこ…生きていれば秀美と同い年の娘がいての?これが美しく成長しておる」

「…ほう」


…すんごい嫌な予感…


爺「久しぶりに会ったがのう、何とこれが秀美と瓜二つ!」

「秀美と同い年なら、24~5だろ?17歳で死んだ秀美がどんな顔になるかなんて分かんないじゃん!」

爺「いちいち細かいのう!16歳の元気な頃の秀美に瓜二つなんじゃ!」


…ロリじゃん


爺「でだ…ワシは考えた」

「…なんか一気にきな臭い臭いがしてきたんだけど!」

爺「その娘を我が劉家に養女として迎え入れて三月くんと夫婦めおとになって貰えば万事丸く収まるのでは…と」

「おいおいおいおい!」


爺「三月くんの最後の彼女…秋山実乃里さんも高倉南さんも君とは6歳差…つまり君は筋金入りのロリ」

「う る せ え!」


爺「理想の相手かと思ったんじゃが…辞めた」

「…?」


爺さんの寂しげな顔が酷く気になる。


「…どうして」

爺「おや、三月くんはやはり乗り気かね?だったらやはり…」

「…そう言う話じゃなく!」


爺「…あまりに似すぎておってのう…」

「…」

爺「…逆にふとした違和感が刺さるんじゃよ…ワシらでさえそうなんじゃから…君はなおさらのう…」

「…爺さん…」


爺「…なので君へのお願いは別じゃ。近い将来、明家でその娘や兄に男の子が生まれたら、その子に劉家の家督を継がせる。そうしたらワシが君に預けていた劉家秘伝のしきたりなどを伝授してやって欲しいのじゃ」

「…それは分かったけどさ、伝授なら、爺さんや秀美の親父さんがいるじゃん」

爺「正直、ワシはいつお迎えが来てもおかしくないから除外じゃ…そしてワシが君にしか伝えていないこともある」

「…」

爺「…」


「…まさかと思うけど…それってあの殺人拳法のことか!?」

爺「殺人拳法とは人聞きが悪いのう」

「…表向きは、太極拳あたりのワンインチパンチ…それが秘伝を正しく理解して上乗せすると人体の内部を破壊する『浸透勁』になる…まさしく殺人拳法じゃん!」

爺「平常心と手加減じゃよ」

「…伝える相手を根本的に間違っているから!」

爺「…いいや、間違っておらん」

「…」


爺「…君は、封印するだけではなく、平常心をもってそれを振るうことが出来る」

「…」

爺「じゃから、後継者というだけではなく、君がその子を見極めて伝えるんじゃ…君の眼鏡に叶わなければ伝えなくても…そのまま廃れても構わない」

「…爺さん」


爺「…そう言えば三月くんは最近、新宿あたりで変わった橋を渡っているようじゃが」

「さすが、良くご存知で…止めるかい?」

爺「何故、ワシらが身内の行動を止めねばならん…好きにすれば良い」

「…」


爺「言っておくが、三月くん…君が仮に人殺しをやったとしてもワシらは君のために動く。好きなように動くが良い。これも経験じゃ」

「…」


劉家の爺さんは、後の嫁である沙織との結婚式を見極めた後、静かに息を引き取ることになる。


ツツーツツー


秀美の部屋の無線機から、世界中に向けてモールス信号が発せられる。


生前の秀美との約束…月命日の後のルーチンワーク…アマチュア無線局の運用。


こんここんこん…突然、部屋の扉を叩くのは


「…その叩きかた…周さんかい?」

周「…はい、三月さま」


周さん…俺だけの神出鬼没なボディーガード兼相談役…この人との付き合いも…もう10年だ。


周「ご要望の情報です」

「…」


周「すなわち…ミキさまと昌子さまの…」






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超絶美魔女が闇夜に誘う ヘタレちゃん改 @kansou001

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