第13話 本当に好きだったのは

「ゴブリンどもよ、

【緊急速報】もっとも難解な謎が、

魔界の奥深い所にあることが判明。

その謎を解いたモンスターが、もっとも賢く強いモンスターである。

つまり、

最優秀賞は魔界の奥の謎を解いた者に与えられる。

修繕工事が終わったものから、魔界への洞窟へ帰還せよ。

そして、最も難解な謎に挑戦し、

最優秀賞を手に入れてみせろ!

ガハハハハハ……」


ゴブリンどもは、修繕工事をハイスピードにこなし、

終わったものから洞窟の中へと戻って行った。


うおおおおおおおおお!!!!!

ギャッギャッ、ギャッギャッ、


「早くしないと、この洞窟は閉鎖する。

人間界に残ったゴブリンには罰ゲームが待っているぞ!」


うおおおおおおおおお!!!!!


ゴブリンどもが洞窟の奥へ奥へと入って行ったのを確認してから、わたしは洞窟に向かって魔力を使った。


「【永久閉鎖】……ん? もう一回【永久閉鎖】……」


くっ、なんと。

魔王であるわたしの力が足りないとは……

わたしは、まだまだ実力不足なのか。


すると、それを見かねた師匠が、手を貸してくれた。


「【蟄居閉門】!」


こうして、洞窟は大きな岩で塞がれ、封印された。

やったのか。

わたしは、魔王としての務めを果たしたのか。

わたしは魔の力を全て使い果たし、地面に崩れ落ちた。


急に、バージョンアップしすぎたからだろう。

どっと疲れがわたしを襲った。


「イザベラ、自称魔王も悪くなかった」


「師匠……、力を貸してくれて……ありがとう…ございます」


「お礼はロベルトに言う事ね」


師匠のその言葉を聞いてから、気を失ったわたしは、そのあとのことがわからない。


町の人々のざわざわした声が、どこからか聞こえてくる。



「イザベラ様が、この世界を救ってくださった」


「イザベラ様、バンザーイ!」



師匠の声とロベルトの声が交差する。

おそらく、ロベルトが近くにいる。

そのあとは、馬車に揺られていているような感覚だった。





 目が覚めると、天蓋付きのベッドに寝ていた。

天蓋付きのベッドなんて、映画でしか見たことが無い。

ん?

このシーンどこかで見たわ。

思い出した。

異世界に転生してきた初日の風景に似ている。

まさか、また一からやり直しじゃないでしょうね。

やめてよ、もう。


「お目覚めですか? お嬢様」


はっ! メイドの声。

でも、うちのメイド服とデザインが違うわね。


「さっそく、ロベルト様に伝えてきます」


よかった、ロベルトって言った。

じゃ、ロベルトは居るのね。

待って、ロベルトと同じ名前で、全くの別人かもしれない。

用心するに越したことはないわ。


それにしても、メイドの数が多いわね。どんだけ高貴なお宅なのかしら。

もしかして、今度はわたし、姫?

なーんてこと、あるはずないか。


わたしが休んでいる部屋に、誰かがやってきた。

この顔と声は……


「イザベラ! 気が付いたか」


「ロベルト! 本当にロベルトなの。

実は、変装している別人じゃないでしょうね」


わたしは、ロベルトの顔の肉を引っ張ってみた。


「いてててて!」


「あらやだ、本物だわ」


すると、次々に人がたくさん部屋になだれ込んできた。


「イザベラが目を覚ましたとは本当か」


国王陛下!

なんと、わたしは王宮のベッドに寝かされていたのか。


「陛下!すみません、今すぐベッドから出ますので、お許しください」


「良い、良い。そのままでいいから」


「でも……」


「イザベラ、今回の働きは、実にみごとであった。

わがエリシオン王国を救ってくれて、誠に嬉しい。感謝する」


「はて、何のことでしょう」


「ん? ロベルトよ、イザベラは大丈夫なのかな?

 まだ頭が混乱しているようだが……」


ロベルトは、わたしが横になって居るベッドに寄り添いながらも、陛下に向かって軽く頭を下げた。


「まだ疲れが取れていないのでしょう。

イザベラはちょっと変わっているかもしれませんが、

わたしにとっては、かけがいのない女性です。

こんな女性に巡り会ったのは初めてですし、この後も会うことはないでしょう。

陛下、わたくの願いを叶えてください。

ぜひ、わたしとイザベラとの婚約を認めていただきますようお願いいたします。」


「うむ、お前がわしの元へ戻って来た理由はそれだな。

わかった。その願いを聞き入れよう。

イザベラこそ、王太子妃にふさわしいと、わしも思うぞ」


そこ、そこ! わたしを放置して何を話しているの?

なんか、勝手に話を進めていませんか?

王太子妃って誰の事かしら?


「イザベラ、いいよね」


「ちょ、ちょっと、待って」


わたしの動揺した様子を見て、陛下は驚いた。


「ロベルト、まだ彼女の同意を得ていなかったのか」


「すみません、まだでした。

プロポーズしようとしたら、逃げられちゃったので」


「これ、これ、何をやっておる。ちゃんとプロポーズしなさい」


「はい、では。

イザベラ、俺が悪役令嬢はかっこいいって言ったばっかりに、

こじれた人生にさせちゃったね。ごめん。

でも、それでいい。

これから先も、そのままのイザベラで俺の側にいて欲しい」


「そうよ、あなたが悪役令嬢はかっこいいなんて言ったからよ。

本当は、どの登場人物が好きだったの?」


「そうだなぁ。俺が小説の話をしているときに、

目を輝かせて聞いていたお前が一番好きだった。

だから……俺と結婚してくれないか」


「何よ、今さら! 悪役令嬢を辞めるなんて、無理よ」


「いいんだよ。

ずっと俺の横で、自称悪役令嬢をしてくれれば、それだけで」


「自称魔王でも?」


「自称魔王でも」


「クスッ、へんなやつ……しょうがないわねぇ、

こちらこそよろしくお願いしますわ」


わぁーっと部屋に集まった人々から歓声があがった。


「ちょっとぉ、嬉しいことに慣れてないから、困るじゃないの」


「悪いな、俺も慣れてないからさ。

しばらくは威張り散らしてもらったほうがいいな」


「何それ、まるでわたしが悪役令嬢みたいな言い方じゃないの。

失礼しちゃうわね」


「だって、そうだろ。

あー、こわいよー。恐ろしい女だよぅ」


部屋中が、笑い声で溢れ、それは王宮の外にまで聞こえていた。


聖堂の鐘が鳴る。

この日は、エリシオン王国じゅうが祝福に包まれた。


END


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悪役令嬢はかっこいいとあなたが言ったから~こじれた無自覚善行が世界を救ったって話 白神ブナ @nekomannma07

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