眠い人生、覚しい人生

@tatitute

第1話

肌に纏わり付く嫌な液体と、今初めて世界に産まれたような感覚で目が覚める。

気がつくと携帯が目の前にあり

「まだ、寝れる。。、、...」

そんな事を思いながら、底の見えない眠りという深い海に落ちていく。


上京して仕事を始めてからは、起床、仕事、食事、睡眠、起床、仕事、、、、、、

私の人生はわかりやすい、単純明快だ。

どこぞの小学生名探偵ならすぐに私の人生の結末を当ててくれるだろう。

少し風が吹けば消えてしまいそうな火を守るので精一杯、そんな日々。

東京の信じられないほど人が乗った満員電車で、田舎のような静けさの中乗客の全員がスマホと睨めっこをしてる。皆自分の火を守るので精一杯だからなのか。そんな事を思いながら出社する。


会社では今にも押し潰されてしまいそうなタスクといつ飲み干したのか覚えていないコーヒーで腹は溢れている。必死に漕いで、漕いで、漕ぎ続けても一瞬強い風が吹けば流されて、はい終わり。そんな悲しい作業を続けて気づけば23時。定時という概念は辞書にしか無いのか。今日も新たな知識を得て帰路に就く。


自宅は薄暗く静けさに包まれ、つけ置きしていた食器だけがプカプカと浮いてる。昨夜は疲れすぎて食事をとった後すぐに寝てしまった。家事と食事を終わらせ時計を見ると短針は12時を離れて少しづつ、少しづつ進み続けている。

「もう寝ないと、」

焦燥感に駆られ、布団の沼地に引き摺り込まれる。

そんな気持ちを抑えて、寝る前のタバコを吸う。至福だ。数少ない東京で1人を感じれる時間。


「明日のタスクはどうしよう。」

頭の中はタスクに追われ、本当の休息は眠る時だけだ。風が私の横を通り抜け、ふと空を観ると地元の夜景とは比べ物にならないほど暗く光のない空だった。上京して暫く空を見ていなかった事に気づいた。「東京って、本当に星も観ることできないんだ。」田舎者らしい感想を抱きながらも、月だけが主人公を気取って輝いていた。


地元では、よく空を観て輝かしい星と自分の未来を重ねていた。でも、東京は無数の数えきれない暗い星と、一握りの星しか輝けない仕組みになっているようだ。理想と現実を空からも訴えかけられる。

でも、私の選択は間違えてないはずだ。ここで踏ん張って胸を張って地元に帰れるまで成長する。そう決めて上京したから。


東京では忌々しく感じた月が、地元で観た時と変わらない輝きを放ってる事を知った。少しでも輝けるように、一歩一歩進んでいこう。

そう決心して、眠りにつかず机に向かう。

「眠いなぁ、、」

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