渇
イエスあいこす
渇
私は神社の御神木の幹に力なくもたれ掛かる。喉は渇きに渇いているし、腹は飢えに飢えている。その状態を苦しく思うが、しかし天から水や食べ物が降ってくるということもなかった。そして真に私を苦しめたのは飢えでも渇きでもなく、自分がそれに対して何を捨ててもしがみつく程の態度を示さなかったことだ。実際どうにかなるのかは別として、私の命への執着はその程度だったということだろう。
そう思うと、この現状にも納得がいった。きっとこれは自業自得。命こそが自分が存在し、思考しているこの現実の根源だと理解しながら、それに執着出来なかった。そのような破綻した存在が世界から排斥されるのは道理だ。
……視界が狭まってくる。死が目前に迫っても、やはり私の心には死への恐怖も生への執着もなかった。結局私は何がしたかったのだろうか。命を得て、そこに何を望んだんだろうか。思えば思うほど、自分の破綻を自覚せざるを得ない。来世とやらがもしあるなら、どうか自分の命に執着できますように。
そう思って目を閉じた。
無数の後悔に包まれながら、私は呼吸を停止した。
渇 イエスあいこす @yesiqos
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