男の友情
昼休み、教室でお弁当を食べながらいつもの友達にスマホを見せていた。うちの高校はスポーツ強豪校でありながらスマホの使用は昼休みは大丈夫な柔軟な学校である。
「これを見てくれ、墨田、炭彦。今日ファンアートがバズったんだ。通知が鳴りやまなくって困っちゃんだよ。ほら、朝からまた増えてる。」
「みせてくれ、どんな感じなのか見てみなければならん」
墨田と炭彦は俺のスマホを二人してのぞき込んでいた。二人はこのアカウントをフォローしていた気がするが、見ていなかったのだろう。運動部は忙しいらしいし。
「これか、俺のところにも流れてきていたぞ。朝見たぞ、金彦すごいな」
「僕もみたよ、なんかいつの間にこんなことになったんですか。これ、僕なんて筋トレの成果を乗せてるのに全然反応がないのに」
「そうだろ、いいだろ今日は朝から大騒ぎだよ。こんなことになるなんて昨日まで想像つかなかったんだか。」
朝とは一転とても褒められて一気に自己肯定感アップである。窓を開けて叫びだしたい気分である。今は花粉がすごいので涙が止まらなくなってしまうかもしれないが涙はきっとうれし涙だろう。
「ほかにないのか、ほかにも書いてるだろ」
ほかにもいくつか見せたが渾身の一作ではなく片手間にかいてるからかすぐにスマホを返されてしまった。
二人は目をきらきらさせながら話を聞いてくれたがほかに見せられる絵がないと聞くと昼食に戻ってしまった。弁当に加えてサラダチキンを食べるのは分かるが、なぜこいつはカロリーメイクを食べているのか。そんなにおなかがすくのなら米を食えよ、米を。
プロテインでもいいが、確かに身長は二人とも大きいがよく食べるからか。俺も身長は180cmあるがさすがにそんなに意味のわからない食べ方はしない。
「参考にしたいからお前らの絵も見せてくれよ。いいだろ、ほら。」
急かしてみると食べながら絵を見せてきた。さてさてどれほどの腕前なのか。
うんうん、これはこれは。……上手。さすがに紫乃ほどではないがやはり印象が違う。特に墨田は見た目に似合わずずいぶんふわふわした絵をかいてるのか。面白い。
炭彦は筋肉満載だな。腹筋の書き方が素晴らしい、筋トレが好きなだけある。
「二人ともやっぱり、うまいな。なんか好きなものが伝わってくるよ。」
「当たり前だろ、何枚描いたっていいんだから、それにこの絵はお気に入りだしな。」
「僕の腹筋見てくれますか、もうね自分の体を見るのが一番なんですよ。やっぱり実物を見ないといい絵は描けないのは真理。金彦も筋トレした方がいいぞ。一緒に始めよう筋トレ。動画を送るからさ。レッツ筋トレですよ!ふひひひ。」
炭彦はあれよあれよという間に脱ぎだしてしまった。どうやらシャツの下には何もきていないらしい。ボタンをはずすと見事な腹筋が現れた。まるでチョコレートのようである。
お腹に力を入れて腹筋がさらに大きくなった。こんなところで脱ぐのは炭彦の悪い癖である。しかし体は彫刻のように見事である。
「金彦、お前の腹筋も見せてください。ふっひひ。」
「今脱ぐわけにはいかないだろ。」
「大丈夫です、最近金彦の腹筋見ていないですし、ちょっとだけですから」
若干抵抗したがワイシャツのボタンをはずされてしまった。
腹筋フェチなのはわかるが自分のだけを見とけよとは思う。まあ、俺も腹筋は割れているのでしぶしぶ自慢の腹筋をみせて炭彦は。
「いいですね。意外と筋トレしてますねぇ。僕のチキンあげましょうか」
「いや、いいよ弁当でお腹いっぱいだし」
会話をしていると自分たちの世界に入りすぎてしまったらしい。全然周りが見えていなかった。
「パシーン、パシーン」
頭部に強い衝撃を受けた。なにが起きたかわからず周りを見回すと墨田にやられたことに気が付いた。気づくと教室がざわついていた。ついついやりすぎてしまった。
「今は食事中だぞ、お前ら。いい加減にしろ」
余りにまともな正論であり、ぐうの根もでない。仕方がなくおとなしく椅子に座った。反省しています…。
腹筋はともかく絵は前に見たときよりも二人とも全体的にうまくなっていた。お前らも頻繁に絵をかいていたのか。なんだかいまままで割と聞き流していたが、意外とみんな描いているのかもしれない。
もっと教えてくれたらよかったのに。二人に比べると画伯になってしまうが張り合うには全然実力が足りないことを痛感した。
弁当を再び食べていると黒川青波が隣にやってきた一体全体何か用でもあるのだろうか。たしか紫乃の友達だったはずだが。なんの用だろう。
「金彦君、なんで脱いでたの」
「いやあ、炭彦に言われて?」
「どう見ても、ノリノリで脱いでたよ。意外な趣味があったんだね。みんな見てたけど、私は好きだよ」
どうやら勘違いされてしまったらしい。さすがに俺はそんなに筋トレしていないし、突然意味も分からず脱ぎだすほどおかしくないはずだ?はずである。
次の更新予定
Vtuberに恋したらリアルにもてはじめたんだが 関原みずき @sekiharamizuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Vtuberに恋したらリアルにもてはじめたんだがの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます