第14話 竜たちの回復状況
ベノムウルフ達を片付けた二人の竜の少女に、俺は声をかけた。
「体調が戻ってきたことで、大分、力を出せるようになったみたいだね」
「これでも竜ですから。病み上がりでも、狼を相手にするくらいは出来ますので」
「まあね。私も体の動きが、ちょっとぎこちないけど。昨日よりずっとマシよ」
スノウもリリスも、二人とも顔色は良い。
人の身体になっていても、彼女たちは竜であり、相応の力を持つ。
診断の段階でも、相当な魔力量をしているのは分かっていたし、万全ならば、かなり戦えるほうだとも見て取れた。それに、
……先日、飛竜が来た時だって、スノウは『一人で逃げる』と言ったけれど。『一人で犠牲になる』とは言わなかったしなあ。そんな気は毛頭ない素振りだったし。
リリスも同じだ。飛竜を前に怯えることもなく、手伝いを申し出ていたくらいだから、そもそも強者であったのだろう。
恐らく、二人とも、昨日の時点でも無理をすれば、飛竜と戦えるくらいではあったのだ。体調さえ悪くなければ、それこそ問題ないくらい。
……どんな強者も病気になれば、そこいらの魔獣にも負けるのは、当然だからなあ。
薬師としては明らかな無理をさせる訳にはいかないので、昨日は出張った。
最初に拾った時、満足に動けないほど弱っていたけれど。この二日で大分回復したようだし。
そうなると適度な運動も必要なので、今回は見守ることにしたのだけど、正解だったようだ。そんなふうに思っていると、
「迷惑かけてすまねえ先生」
ベノムウルフ達の状態を確かめていた剣士が戻ってきた。
剣を収めていることから、戦闘終了という事で良いようだ。
「いやいや。突然来たのに守ってくれてありがたかったよ」
「ほとんどお嬢ちゃんたちに助けられたけどな。お陰で無傷だ。とりあえず俺はこいつらを運んで、中の魔石なりをとっていくから。……あと、先生のために、毒の爪も何本か、取っておくよ」
「いいのかい!?」
「さっきから先生の視線が毒の爪に物凄い回数いってたし、気になってるのは分かってたからな。ただ、時間はかかりそうだから、先生は向こうの地主さんの家に行っておいてくれ。迷惑かけた分も含めて、色付けて渡すよ」
魔獣から取り出すことのできる魔石は薬の材料にもなる。
それ自体が有益なものであるし、毒の爪という研究材料も増えるのは非常に助かる。
「いやあ、嬉しいねえ! それじゃあ地主さんの診察をしながら、待ってるよ」
「ああ、よろしく頼んだ」
〇
「ふう……いやはや、毒が厄介な魔獣を倒せて良かったぜ」
リリスの聴力は、竜であるが故、人のそれより高い。
人の姿になっていても、それは同じ事だ。
だから地主の家と呼ばれた屋敷に向かう中、後方で空気に溶け込むように呟かれた剣士の言葉も耳に入る。
リリスは口の中で小さく、誰にも聞こえないような声をこぼす。
「毒は厄介……。そうよね……」
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無価値と呼ばれた二竜を拾った《薬師》、邪竜と聖竜の主となる~最強暗殺者の《毒使い》、表舞台で《龍の薬師》として信頼されてます。 あまうい白一 @siratori801
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