第10話 健太郎はチビでデブ

「おねえさん、健太郎は優しいから、

困っているおねえさんを放って置けなかったんですよ。」

「そこ、大事なところですよ!」


「はい、感謝しています。」


「無一文で、無職で、住むところもないおねえさんを助けても、

健太郎には、何もメリットはありませんからね。」


「はい、ありがたく思います。」


「健太郎って、チビでデブで、イケメンじゃないけど、

いい子なんですよ。」

しみじみと美乃花は言う。


「そう、オタクで陰キャで、音痴でノロマでドスケベだけれど、、、」


「ちょっと、晴子!それ言い過ぎぃ!」


「美乃花こそ、チビでデブはダメだよ。

容姿は自分ではなんともならないんだから。」


「チビでデブじゃない世界線もありますよ。」

おねいさんが口を挟む。

「小学校で一緒だった山田リチャード太郎くん、覚えていますか?」


「いた!ハーフの子。バスケが上手かった子。」


「うん、健太郎と仲良かった子。

でも、五年生の時、転校して行っちゃったんだよね。」


「そうです、その子です。

彼は今、アメリカでNBAのプロ選手となってます。」


「へーぇ。」


「彼が転校しないで、

中学高校と健太郎様と一緒に過ごした世界線があるんです。」

「一緒にバスケットボール部で競い合って、

チビでもデブでもない健太郎様がいるんです。」


晴子と美乃花は、顔を合わせて、一瞬の静寂の後、

「キャハハハハハハ!ハハ!健太郎がバスケ!?」

「似合わなーーーー。」

「無理ムリむりぃ!運痴の健太郎だよ、ありえなーぃ。」


「健太郎様は、それはそれは、努力したんですよ。」


「無い!ない!健太郎は三日坊主の天才だからぁ!」


「健太郎様は、頑張りましたよ、お二人のためにね。」

晴子と美乃花に目で合図を送るおねえさん。


「えっぇ!?どういうこと?」


「なにそれぇ!?」



https://kakuyomu.jp/users/moogot/news/16818093089330211014

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

9次元世界から来たおねえさん ムーゴット @moogot

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画