第9話 かぐや姫の正体
お風呂から上がった晴子。
リビングのソファーでは、健太郎が酔い潰れていた。
「健太郎ぉ、お風呂空いたよ。大丈夫かぁ。」
「むぅうん、もうちょっと休んでから入る、、、」
「じゃあ、女子はテントで寝ることになったから行くね。
風邪引くなよ。」
晴子は、健太郎にタオルケットをかける。
庭のテントに向かうと、中から楽しそうな笑い声が。
美乃花とおねえさんは、いつの間にか打ち解けている。
「キャハハハ!おねえさん、それ、ウケるぅ!」
「そうなんですよぅ、あれ、私なんです。」
「、、、トン、トン、晴子さん来ぃたよぉー。」
テントに入るのに、ノックの代わりの発声。
「ねぇ、何の話?何がウケるの?」
「だって、おねえさん、かぐや姫は、自分だ!って言うんだもん。」
「そうなんです、仕事が一段落して、一旦帰ろうとしたら、
おじいさんに見つかってしまって、へハハハハ。」
「その後、月に帰ったんですか?」
「えぇ、月の裏側に5次元世界へのワームホールがあるんです。
そこを経由して、次元を順番に上げていって、
最後に9次元まで帰るんです。」
自信たっぷりのおねえさんの発言。
美乃花と晴子は、顔を見合わせ、一拍の静寂の後、
「プァハー!!キャハハハ!」
「おねえさん、最高!」
テントに持ち込まれたアルコールも、
3人にどんどん消費されていく。
「うぅうぅ、、、ねぇ、ねぇ、おねえさん。
9次元には彼氏、いるんですかぁ?」
「あぁぁぁ、私もおねえさんの恋話聞きたーぃ。やはははぁ!」
おねえさんは、冷静に答える。
「いません。そもそもオスとかメスとかありません。
肉体がないんです。
2人にわかりやすく言うなら、
私の元々の存在は、精神だけです。魂だけです。」
2人、顔を合わせて、目を合わせた後、
「ブゥハーーーー!キュアハハハハ!」
「ニャー、やっぱり、魂さんは健太郎狙いなんですね。」
「ちぃ、ち、違います。
健太郎様は、私の恩人です。感謝しています。
人間として尊敬できる方です。」
「やーーーん、尊敬ですかぁ。
尊敬は恋心に変わることもあるんですよぉ。」
「尊敬ですね。恋心ですね。
でも、本質的には、私には意味がわからない。
26年分の与えられた、地球人として経験したはずの記憶から推測はできますが、
辞書や書物から引用したような解答はできても、
実感として認識できないのです。
地球で活動を始めて、地球時間でまだ1年しか経っていませんから。」
寂しそうな顔のおねえさん。
「でた!、、、私は地球時間で6時間前におねえさんに出逢いました。
キャハハハ!、、、ハ、ハ、ハ。」
「あれれれぇ、おねえさんはかぐや姫の時代にもいたんでしょ?」
「あれは、私の意識の一部です。
その都度、リセットされて、記録として残されているだけです。
客観的に歴史を見ているような感覚です。」
「おねえさん!とっても綺麗です。
二十代の、女性が一番綺麗な姿に見えます、、、けど。
ほんとはいくつなんですか?」
「体は、26歳を想定して創られています。
、、、私は地球で言うビッグバンより以前から意識がありますが、
何もない無の記憶で、
あっという間の短い時間のようでもあり、
悠久の長い長い時間のようでもあり。
それに比べて、この地球に来てからの1年間はとても濃い時間でした。
時間とは、本当はこういうものだったんですね。」
https://kakuyomu.jp/users/moogot/news/16818093089330211014
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます