第8話 リアル初体験の悔し涙

「わかった!盗撮されてたんだ!」

晴子はおねえさんを人差し指で指す、

酔っ払いの決めポーズ。


「えぇ!マジィ!最っ低!ひどいよぉぉぉぉーーー!」

美乃花も少し酔いが回って、感情が高ぶる。


「あの手のホテルって、

壁の鏡がマジックミラーだったり、

天井に隠しカメラがあったり、

盗撮されてるかもって、聞いたことがある。」

健太郎は、現実的なカラクリがあるのでは、と、疑い始めた。

9次元世界は作り話じゃないのか、と。


「それで流出した動画を、おねえさんは見たの?

それとも、おねえさんはホテルの関係者!?」

責め立てる晴子。


冷静なおねえさんの返答。

「違います。私は時空を超えて3次元空間を観察できるのです。」


「ハイ、ハイ、おねえさんは異能者なんですね。

それとも異星人ですか?

地球人には及ばない科学技術をお持ちなんですね?、、、《あれっ!?》」

強い言葉を言い放った晴子だったが、

急に思い出すところがあった。

以前、同じようなやり取りを経験した記憶が、あったような、無かったような。

不確かなデジャヴを感じた。


「おねえさんは、何か人には言えない事情を抱えているんですね。

でも、差し支え無いところまで話してください。

力になれることがあるかもしれません。グフん。」

美乃花は、泣き上戸が入って、罪を憎んで人を憎まず的発想。


「そうです。ぅぅぅうん!僕がおねえさんを助けてあげます。ぅぅん。」

アルコールに弱いにもかかわらず、

毎度のことながら、黙々と飲んじゃう、

健太郎は、すでに潰れかけていた。


「おねえさん、はっきりさせましょう。

仮におねえさんは、魔法使いの異星人だとします。

では、何かすんごいこと見せてください。

この場で、証明、できるでしょぉ!!」

晴子は遠慮ができないほどの酔っ払いとなった。


おねえさんは寂しそうな横顔を見せた。

「できるものならやってますよ。

でも、もうできなくなっちゃったんです。

組織に見捨てられたのです。」


「ほーら、やっぱり証明できないのよね。

異次元から来たなんて、デタラメなんでしょ。」


「本当なんです。

証明する術はないけれど、本当なんです。」

悔しい涙があふれる。

作られた記憶ではない、

リアルの悔しい気持ちを初体験するおねえさん。


「それよりも、健太郎ぉ!!」


「な、何?」


「この人、家に上げて大丈夫なの?

泥棒か強盗の下見かもしれないよ!!」


「違います!闇バイトとかじゃありません。

健太郎様のご厚意で、ここにいるだけです。

ご迷惑なら、出て行きます。」

悔しい、悔しい、思いが伝わらず悔しい。

冷静な口調で踏ん張り通すが、感情が爆発寸前のおねえさん。


「おねえさん、僕が招待したのだから、ここに居てください。

晴子、ちょっと言い過ぎだよ。僕はおねえさんを信じるよ。」


「詐欺の被害者は、みんなそうして引っ掛かるんだよ。」


「晴子、もうやめろ。」


「晴子、私もおねえさんを信じる。

もしかしたら、異次元は嘘かもしれないけど、

悪いことができる人じゃないと思う。

ね!おねえさん。」

美乃花は、おねえさんに小さなガッツポーズを示した後、

振り返って、晴子に笑顔を送る。


「もう、そうやっていつも私を悪者にするぅ!

ここは健太郎んチなんだから、好きにして。

でも、私はちゃんと見てるからね、おねえさん。」

晴子は、おねえさんをニラミつつ、その後、笑顔。


「でもでも、本当なんです、とは、もう言いません。

今夜は、ご厄介になります。

みなさんに感謝します。」

キレイなおねえさんは、少し落ち着く。


健太郎に忍び寄る睡魔。

「ふあぁぁあぁ、ちょっと酔ったな。

潰れる前にお風呂準備してくるね。」






お泊まり会は、まだまだ続く。

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