第47話 冒険者ランクアップ!

「偉業ですよ!!! 1日に3クエストも達成だなんて!!!」


 冒険者ギルドのオタク職員メメが、興奮のあまり丸メガネを曇らせながら俺たちを褒め称える。


「いや~、それほどでも」


 なんてったって、こっちには4人のエイリアンがいるわけで。

 しかも、俺を観測するために各星から選びぬかれたエリートエイリアンたちが。


「たった1日で冒険者ランクを【E】に上げるなんて伝説ですよ! 伝説ぅ!」


 鼻息荒くわめきたてるメメ。

 とはいえ、王様からの依頼クエストを受けるには冒険者ランク【B】が必要。

 ってことで、まだまだしばらくは地道に冒険者稼業をやる必要がありそうだ。


「この最後のクエストがデカかったよな。ゴブリンを50匹討伐? すごいじゃないか。【C】級冒険者でもなかなか難しい案件だぞ。しかも……」


 冒険者ギルド長ヘラクのいかつい眼差しが「ぎろり」と俺たちの連行したギルド職員ゼラに向けられる。


「ひっ……!」


 怯えて俺の後ろに隠れるゼラ。


「チェクトにべったりだったゼラが証人──だと?」

「そそそそ、そうです……! わた、私がたまたまその場に居合わせて……」


 すがるような瞳を俺に向けてコクコク頷くゼラ。

 あんだけイキってたくせにチェクトに捨てられた途端にこれだもんな。

 俺たちをハメたことにはムカつくけど……。


「ああ、そうだ。ゼラはその場に居合わせただけだから、俺たちが保護して連れ帰ってきた」


 ということにした。

 ほら? だってめんどいじゃん?

 ギルド長派と補佐役派の内部抗争とか。

 こっちはちゃちゃっと冒険者ランク上げて、

 王様からのクエストこなして、

 日本に帰る手段を聞ければそれでいいんだ。

 わざわざこんな厄介事に首を突っ込む必要はない。


「え~? でもさ~、アマツキ~?」

「いいから、田中さん」

「うぅ~、ちぇ~……」


 文句ありげな田中さんを黙らせ、俺はヘラクに頷く。


「ほら、こうして証拠の耳も獲ってきたわけだし」


 俺はクエスト用のズタ袋に詰め込んだ大量のゴブリンの耳を差し出す。


「うぉっぷ……匂いがだな……」

「激しい戦闘だったからな。匂いは我慢してくれ」


 俺たちがゼラに騙されておびき出された場所って、一昨日ロゼッタが夜中に俺たちをゴブリンと戦わせた場所だったのよね。

 で、その時に死体を草むらにポイしてたから、それを引っ張り出して討伐の証拠にしたってわけ。

 だから2日経ってるので、ちょっと匂う。


「も、問題ないですっ! その……臭かったんです! 臭いゴブリンだったんです!」


 ゼラが必死に繕うけど、かえって怪しくなるから黙っててほしい。


「でもこれは腐敗して……」

「腐敗ゴブリンだったんです!」

「腐敗ゴブリン? 私ですら聞いたことありませんね。グールの一種ですか?」

「ちがっ……あの……グールなりかけゴブリン……グーラないゴブリンです!」


 何言ってんだこいつ? 感がギルド長室に漂う。


「あ~、わかったわかった。ゼラは書類まとめとけ。ソラたちのランクアップの手続きもな」

「は……はいっ!」


 マッハの早さで部屋を出ていくゼラ。

 逃げ足だけは一人前だな……。


「で、ほんとのところはどうだったんだ?」


 ヘラクがウインクしてくる。

 うげっ、ゾッとしないな。ハゲ親父のウインク。


「勘弁してくれ、なにもないって。ほんとにゴブリンを退治してきただけさ」

「ふ~ん? お前らの前にチェクト側の冒険者共がボロボロになって帰ってきてたんだけど、それも?」

「さぁ、なんのことだか」

「あくまでしらを切るってことか。まぁ、いい。こちらとしてもソラたちをゴタゴタに巻き込むつもりはないからな」

「助かるよ」


 さすがは海千山千のギルド長。

 これ以上追求してはこないらしい。


「で、どうする今日は?」

「? 帰って寝るだけだけど」

「そうか、よければメシでもと思ったんだが」

「ありがたいけど、家で待たせてるメイドがいるんでね。腕によりをかけて夕食を作ってるらしくて」

「なるほど、そりゃ早く帰んなきゃだな」

「ああ、このクエストの報酬は明日受け取っても大丈夫?」

「もちろんだ。数が多いからな、ゼラを残業させるさ」


 俺たちをハメたんだ。

 残業くらいのバチは当たってもいいだろう。


「ああ、そういうやどうだった?」

「なにが?」

「チェクトの印象は」

「……もう掘り下げてこないのかと」

「掘り下げ? なんのことやら」

「はぁ……まぁいい。そういえばさっき、変な格好をした紫色のパーマ野郎を見かけたんだけど、もしあれがチェクトって野郎だとしたら──」

「したら?」

人誑ひとたらし。一番面倒なタイプな奴って印象を受けたかな」

「ハハッ! そりゃ本人だ! もし──ソラが、そんな奴と対立したらどうする?」

「ん~……そうだな」


 ヘラクが息を呑んで俺を見つめる。


「関われば関わるほど泥沼に引きずり込まれそうだから……シンプルに消えてもらうかな。遠くに行ってもらうとか」

「ん~……たとえばだな? 『同盟国から来た使者のため追い返すことは出来ない』場合とかだったら?」

「仮定の話が続くな~」

「すまんな。ただ、どうしてもソラの意見が聞いてみたくてな」

「そうだなぁ。そもそもチェクトって何が目的なの? ギルドを乗っ取ること? なんのためにギルドを乗っ取ろうとしてるの?」

「それがわからんから皆振り回されてるんだ」

「ふ~ん? じゃあ、まずそこを探るとこからじゃない? 目的が判明すれば折り合いの付け所が見つかるかも」

「なるほどな、参考になった。ありがとう」

「どういたしまして」


 ヘラクも大変だなぁ、あんな面倒くさそうなのと対立して。

 そうは思うも、俺の心はすでに「くのいちメイド」リンの待つ自宅へと向いていた。

 今日はいっぱいクエストやったからな。

 帰って湯船にでも浸かって疲れを取りたい。


「じゃ、また明日」

「ああ、ゆっくり休んでくれ」


 ガチャ。


 ギルド長室の扉を開けると、そこに一人の幼女が立っていた。


「ヘラク~? なんか子どもいるだけど~?」

「子ども? うちのは家で寝てるはずだが……」


 ほっぺがムスッと膨れた銀髪の少女は、ジトッ……と俺の顔を見ると「見つけた」と言った。


「お嬢ちゃん? 誰かと勘違いしてない?」

「してない。見つけた。【宇宙遺伝子ソロンα】、【万能遺伝子バースΩ】の持ち主」


 ……ん?

 この子、エイリアン関係なのか?

 そう思ってハッとした。


(たしか……この世界にもう一人エイリアンがいたような……)


 恐る恐る幼女の気配を探る。

 うん……この第六感が幼女がエイリアンであることを告げている。


(えっと……たしか今朝あっちの方に感じた魔王プレドの気配は……)


 ない。

 プレドの気配、朝感じた方向にない。

 というか。

 あれと同じ気配が目の前に、いる。



「我はプレド。魔王プレドじゃ。【虹泡レインボーシャボン】、我を太陽系へと連れ戻せ」



 えぇ~……?


 魔王プレド……。


 たぶん、プレデター……。


 そいつが、幼女姿になって向こうから来ちゃったんだけど…………?



──────────


【あとがき】


 ここまで読んでいただいてありがとうございます!

 ほんと~~~に申し訳ないのですが、PV的に心が折れてしまったのでここで一旦終わりとさせてください! 完全に自分の力不足です、申し訳ございません……!

 ここまで読んでいただいた方には心から感謝です! ありがとうございます!

 今また新たにスローライフものを書いてるので、カクコン10の締切に間に合いそうなら、数日後に投稿を始めたいと思います。

 凝りずにすみません、なにとぞよろしくお願いします……!

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エイリアンなクラスメイト4人と一緒に異世界に転生したので「エイリアンテイマー」として生きていくことにします めで汰 @westend

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