4 鳥ヶ峰の戦い

 多羅尾は馬に乗って視察におもむいた。

 家老自ら戦場におもむき、味方の士気を挙げる狙いがあった。


 鳥ヶ峰には天幕を張った大砲陣地が築かれていた。

 ボートホイッスル砲2門とダライバス砲2門。

 あとの3門は別の場所に配置している


 ダライバス砲は前装式の大砲で左右上下に方向を変えられるのが利点だ。

 ダライバス砲は安政6年に町人から寄贈されたものだという。

 福田耕平によると、ダライバスの由来はオランダ語から来ておるそうだ。

 


 森村にある細い道を天誅組が行軍している。

 藩士の耳にも鐘太鼓や法螺貝の音が聞こえてきた。

 戦国時代さながらの甲冑を着たものもいる。


 多羅尾は馬上から声を張り上げて、味方を鼓舞した

おびえるでない! 後詰めには郡山藩がいる」


 多羅尾東が二番隊の号令をとる。

「砲の火蓋を切れ。敵は2列縦隊だ」

「うて! 放て!」


 藩士が口火に導き棹をくっつけると、ボートホイッスル砲が火を吹いた。

 放たれた砲弾は天誅組の頭上を通り越し、かなり後方で爆発したようだ。

「銃を構えよ!」


 二十人の銃隊に命令が下る。

 一斉にゲベール銃の引金に手をかける藩士たち。

 ゲベール銃から白煙が上がると、丸い鉛玉が放たれた。

「銃隊は下がれ」

 

 1番隊が放ったライフルカノン砲が天誅組を直撃した。

 破裂弾が1人に直撃し、2人が巻き添えを食らった

「施条砲は狙いが正確だな」


 天誅組の隊列が崩れだした。我先にと逃げ出そうとする。

 大砲と銃の激しい音が天誅組の行軍を乱した。








 ※安政6年は1859年

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高取藩 阿野ミナト @RAM06

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