第14編 星海(ステラマリン)

星海(ステラマリン)


子供の時に夜になるたび、見上げた世界。一つ一つの瞬く点が水面の反射のよう。まれに尾を引く魚を見ると、目を閉じ心が声を出す。


水に顔すら付けられないが、それでも飛び込み泳ぎたい。毎日毎日そう思う。


ある時、いいもの手に入れた。白い天体望遠鏡。届くその日を指折り、破る。


見たいものがとめどなく、頭に浮かび揺られ揺られる。まずはあの川見てみたい。そんなことを描きつつベッドで横になっている。


待てど暮らせど届かず気落ち。時折、この手を伸ばしてみても空気を掴む、そればかり。


ある日、図鑑を広げると、目に映るのは色とりどり、丸く、楕円に、泡のよう。


じれったいなと思い切り、持ち出したのはシュノーケル。ついでに付き輪を膨らます。


いつもは伸ばす腕だけど、今日は一味味付け変えて、大きく交互に掻き分ける。慣れない足はばたついて、はたから見たら遭難者。


コツを掴むと見違えて、自由自在に泳いでる。あんなに遠く離れて見えた、光が周りで舞い踊る。


いて座がとてもきれいに見えて、遠泳開始の合図とする。けれでもあまりに遠くて心が折れて、手にした時計のベル止める。


今でも時折、空を見て、あの日のように泳ぎたい。

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詠集 「星海(ステラマリン)」 劇団騎士道主催 @theatre_kisido

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