第7話 未来へ
「花木さんは、俺のことを利用していると言ったね。
利用価値があるから、
俺のことが好きじゃないけど、関わっているの?」
こんなことを尋ねたら、絶対彼女の反発のトリガーとなる。
わかっているけど、確認なしに先へは進めない気がした。
即答が返ってきた。
「違う!違う!違う!!そうじゃない。
そうじゃない。そうじゃない、けど。」
「武佐士くんだけが、武佐士くんだけが、
私を見ていてくれる。
武佐士くんだけが、私の話を聞いてくれる、うぅ。」
涙声になる花木さん。
「武佐士くんだけなの。武佐士くんしかいないの。」
「俺に恩返ししなくちゃ、とか思っている?」
「違うぅ、違うよぉ、、、
何でそんなこと言うのぉ、、、、
私は、私は、、、、私は、武佐士くんのためなら、何でもできるよ。
武佐士くんの喜ぶ顔が私の幸せになっているんじゃない。
恩返しの義務だなんて、寂しいこと言わないで。」
彼女は、急に落ち着きを取り戻し、
何かを悟ったような顔で、話を切り替える。
「武佐士くんこそ、私を救いたい思いが強すぎて、
自分が犠牲になっていないの?」
「前はもっとバイトのシフト入れてたよね。
前はもっと、クラスメートの友達と遊びに行く話をしてたよね。」
「私を救うことが最優先になっていないの?」
「私が武佐士くんの人生の邪魔をしているんじゃないの?」
晴天のヘキレキだった。
そんな風に思われていたのか。
俺は自分のことよりも、彼女が穏やかでいられますように、
そればかり考えていた。
でも、これは、彼女が大切な存在だから?
彼女が好きだから?
彼女を愛しているから?
それが俺の幸せでもあるから。
彼女はさらに冷静に、言葉を発した。
「こういうの、【共依存】って言うやつだと思います。
私たちは健全な関係ではないです。」
俺は、ちょっと怒りが込み上げた。
「何だそれ!人を思いやって、何で不健全なの!?
俺は美鳥が好きだ。愛している。
それだけだよ。」
彼女をぎゅーっと抱きしめた。
彼女は大粒の涙を頬に流しながら、俺を見た。
「ありがとう。
今日まで、辛いことばかりだったけれど、
生きててよかった。
ほんと、、、、よかった。
武佐士に出会えて、よかった。」
「武佐士、あなたが大好きです。」
「うん、美鳥も生きていてくれて、ありがとう。
俺と出会ってくれてありがとう。」
「大好きだよ、美鳥。」
俺は、花木さんのおでこにキスをした。
ルパンがクラリスにしたように。
彼女は一度離れた後、駆け寄って来て、俺の肩に手を掛け背伸びをした。
唇に暖かくて柔らかでやさしい感触。
俺のファーストキスから、二人の未来が始まるんだ。
未来に続く。
一旦ここで終焉とします。
彼女の救難信号を俺は受け止められるのか? ムーゴット @moogot
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