第7話メイ探偵誕生

やっと1週間がたち、今日、船とお館様の従兄弟とホテル経営のプロが来る日。

前の日にサツキは島民を集めて、彼らを迎える準備を話し合った。

島民が皆で港で待っていると、予定の時間に船が着いた。

船からお館様の従兄弟とホテル経営の専門家が降りてきた。

「 遠路ご苦労さまです。無線機が壊されてご連絡できませんでしたが、先週お館様が何者かに殺害されました。ご愁傷さまです。それと同時に執事の不審死と無線機破壊も起こりました。それらを警察に報告する為、船長の無線機をお借りしたい。従兄弟様とお連れの方はお館で食事なさって下さい。」

下男の霜島と数人の男達が船に乗り込んだ。

従兄弟と連れは軽トラの助手席に分乗して、残りの者は荷台に座って館に向った。

食事後、

「お館様が殺された経緯を詳しく知りたい。」

と、言うので、食堂のおばさんが詳しく説明した。

「一目瞭然の事件だ。執事がお館様を殺害し、自分も毒を飲んで自殺したんだ。桜という女がいるだろう?。あれは二人の娘だ。

娘に遺産を遺すという遺書を書いたと、お館様が以前言っていた。娘も共犯だろう。拘束すべきだな。」

と、従兄弟は言放った。

しかし誰も動かなかった。

「何をしているんだ。娘も怪しい。お館様の財産目当ての犯行だろう。」

「お館様と執事が亡くなって、桜さんが逮捕されると、得をするのは従兄弟さんだけですね。」

サツキが進み出て言放った。

「何が言いたい?。」

「執事さんと桜さんが犯人なら、無線機を壊す必要がない。」

「証拠を隠滅する時間稼ぎだろう。」

「おかしな事があります。館にカラクリがあるという噂を館の使用人も島民も知らないのに、船長だけが知っていた。何故?。あなたが教えたからです。」

「バカな。」

「船長は逮捕しました。手袋をして靴底にもなにか巻いていたようですが、無線機を壊したバールは証拠品として船から見つかるでしょう。」

「一般人が逮捕出来る訳がないだろう?。」

「市民の義務として逮捕権があります。」

「無線機を壊した者が殺人犯とは証明されないぞ。」

「警察が調べれば髪の毛か服の繊維かなにか出るでしょう。」

数時間後、警察が島にやって来た。

警察の捜査の結果はサツキの言った通りだった。

「船長は僕らを島に降ろした後、海に戻ったふりをして、海で時間を潰し、夜になって島に戻った。

あの夜、玄関から館に訪れた。

玄関の横の部屋の執事が応対した。

従兄弟から預かった書類に目を通して欲しいとでも言って、書斎に入った。

お館様を殺害し、密室をつくり従兄弟から教わった方法でカラクリを使い外に出る。

そっと玄関からまた入って執事の部屋を訪ね、お館様への用事が終わったから帰ると言って、執事に挨拶する。

執事に水でも所望して、執事が目をそらした隙に、晩酌のツマミにフグの毒でもいれて、執事がそれを食べる前に館を出る。

船長が館を訪れた為、執事は晩酌を中断していただろうからね。

船長が帰ったので、執事が玄関と自室の鍵を掛けてから、毒が入ったツマミを食べて死んだから、ここも密室となる。

使用人達は二階の奥の使用人室にいて船長が来たことにも気付かない。

その後バールで南京錠と無線機を壊し船に戻り島を出た。

島民は早く寝るので誰にも気づかれない。」


「サツキくん、船長が自白した。全て君が言った通りだったよ。あの従兄弟が計画し、船長が実行した。従兄弟の自宅から書斎のカラクリについて書かれた父親の日記が見つかった。遺書は書斎にあって、遺産を全て桜さんに遺すとあった。従兄弟は遺産を自分の物にしようと殺人を計画し、桜さんを犯人に見せかけようとした。」

「遺産は桜さんが相続出来るんですね。」

「ああ、彼女は神社の修繕費用を負担し、残った金で君たちと同じ大学への進学を希望しているらしい。」

「桜さんらしいですね。それに、進藤に脈ありかな?。そういえば、進藤の奴、最近妙に機嫌がいい。」

「進藤くんといえば、桜さんに大学入試用の勉強を教えているそうですね。そうだ、言い忘れていたが、執事殺害に使ったのも、君の言う通りフグ毒だった。素晴らしい推理力だ。大学卒業後、警察に入らないか?。」

「ありがとうございます。警察よりも探偵のほうが良いですね。僕は生まれつきのメイ探偵だから。」

「どういう意味かね?。」

「五月(サツキ)は英語でメイですから。メイ探偵なんです。」

このメイ探偵、これから中東で大活躍をするけれど、それはまた、別の話。

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桜と恋と密室死体 高井希 @nozomitakai

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