冬のコタツ

@kunimitu0801

冬のコタツ

 寒さが厳しさを増す冬の日、健太は自宅のリビングでコタツにくるまり、温かいココアをじっくりと味わっていた。窓の外では、白い雪が静かに舞い降り、世界をふんわりと包んでいる。静寂の中、彼はふと考えた。

(今日は、沙織が来るはずだ)

 幼馴染の沙織とは小さい頃からの付き合いで、彼女が遊びに来るのを心待ちにしていた。健太は内向的で引っ込み思案な性格だが、沙織の前では自然体でいられる。

ふと、部屋の静けさを破るノックの音が聞こえ、健太の心臓がドキリとする。

「健太、いる?」

 その声を聞いた瞬間、健太は慌ててドアを開けた。そこには、寒さを防ぐためにモコモコの服を着込んだ沙織が立っていた。彼女の髪には雪がちらほらと乗り、頬は赤く染まっている。

「やっと来たね」

 健太はニコッと笑った。

「寒いから、早くコタツに入ろうよ」

 沙織は元気な声で言い、彼女の目がキラキラと輝いていた。

 二人はコタツに入り、ホカホカとした感触に安らいだ。沙織は手に持っていたココアを差し出し、健太は感謝の微笑みを返した。

「そういえば、最近どう?」

 健太が問いかけると、沙織は楽しそうに自分の学校生活について話し始めた。

「友達と一緒に、冬祭りの準備をしているの。光るイルミネーション、本当に綺麗だよ」

 あまりにも楽しそうに話す沙織の姿を見て、健太は自分もそんな毎日を送りたいと思った。同時に彼は、彼女について少しずつ心の中で膨らむ特別な感情に気づく。

「健太はどうなの?最近、好きな子とかいるの?」

 沙織が急に聞いてきた。その瞬間、健太は心をドキリとさせた。

(そんなこと、言えるわけがない……)

「うーん、特には……」

 つい誤魔化してしまう健太。

「ねえ、健太。覚えてる?小学生の時、一緒に雪だるまを作ったときのこと」

 沙織の話を聞いて、健太は微笑んだ。

「もちろん!あの時、沙織が作った帽子を付けた雪だるま、すっごく可愛かったよ」

 そして、思い出話が続く中で、二人は度々目が合い、そのたびにどきどきした気持ちが募っていく。

「時々、あの頃に戻れたらいいのにね」

 沙織が少し寂しそうに言った。

「うん、俺もそう思う」

 健太もまた、沙織と過ごした日々が今も彼の心に大切な思い出として残っていることを感じる。

 中学生の頃、「恋人ごっこ」と称して恋人のいない二人はデートの真似ごとで一緒に出掛けたりした事もあるものだ。

「沙織はきっといい恋愛ができるよ」

 健太が心の中の思いを抑え、沙織に微笑みかける。

「そうかな。でも、私は……」

 沙織の言葉が途切れ、部屋の中が静まり返る。彼女の目が少し潤んでいるのを見て、健太は心の中の緊張感が高まる。

(このままじゃいけない、沙織の本心を知りたい)

「沙織、実は……ずっと、君のことが好きだったんだ」

 思わずその言葉が口からこぼれた。沙織は驚いた表情で彼を見る。

「え……本当に?」

 沙織の目が大きく見開かれる。

「うん、ずっと前から。でも言えなくて……恋人ごっこしていた時にきちんと伝えておけ良かったってずっと後悔していたんだ」

 沈黙が流れる中、二人はお互いの目をじっと見つめ合う。沙織の頬は赤く染まり、彼女もまた気持ちを隠しきれずにいた。

「私も、健太と一緒にいるのが好き」

 沙織は少し恥ずかしそうに言った。

 その瞬間、健太は彼女の近くに寄り、彼女の手を優しく握った。外の雪がさらに激しく降る中、コタツの温かさに包まれた二人は、思わず距離を近づけた。

「これからもずっと、一緒にいたい」

 その言葉を聞いた沙織は、頷いて同じ思いを伝えてくれた。二人はゆっくりと顔を寄せ、初めてのキスを交わす。

 コタツの中で温かさを感じながら、健太と沙織は未来への展望を語り合った。雪景色の中、二人の心は一つになり、新たな恋の始まりを感じていた。

「これからも、一緒にたくさん思い出を作ろうね」

 沙織が笑顔で言った。

「うん、もちろんだよ」

 健太の顔も自然と微笑んでいた。

 コタツの中で二人は幸せに包まれ、冬の寒い日が暖かい思い出で満たされていくのを感じた。

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