夜に働く
大隅 スミヲ
第1話
私は、とある職業のしがない中間管理職である。
四十代。妻子持ち。ごくごく普通のどこにでもいるようなおじさんだ。
ただ、そのへんのサラリーマンとは違う点がある。それは夜間勤務者であるということだ。
身バレを防ぐために、あまり職業については詳しいことは語れない。まあ、特殊といえば特殊な職業ということだ。
世間一般で知られている職種でいえば、システム管理者といった感じだろう。
どんなことをしているかといえば、人々が寝静まった頃に使っていないシステムのメンテナンスを行うのが主な仕事だ。最近は自動化の波が押し寄せ、この仕事も減ってきてる。しかし、それでも我々のような夜間勤務者は必要なのだ。
我々、夜間勤務者にとって昼夜逆転は当たり前の世界である。
実際に出勤するのは夕方からだし、帰宅するのも昼過ぎなのだ。だから、朝の通勤ラッシュなどは縁が無い。その点は良い点かもしれない。
夕方に出勤することから、近所の方々には「あの人はどんな職業なのだろうか?」と思われていることが多い。
同僚などは奥さんが口をすべらせて「うちの旦那は夜の仕事だから」と近所の人にいったことから、水商売をやっているのだとずっと思われていたらしい。
夜間勤務者は基本的に服装は自由だ。あまりにも社会人としておかしくない格好であれば、別に問題はない。多くの同僚がTシャツにジーンズという格好で仕事をしている。
基本的に夜勤の時は、夜中にずっと起きていて、日が昇る頃に仮眠を取る。
仮眠は最低4時間取らなければ、宿直扱いとならないため、4時間寝るのは必須だったりする。
朝日を見てから眠るというこの妙な生活。体内時計が壊れていることは確かだ。
若い頃は、寝なくても大丈夫な体だった。
夜勤終わりの睡眠時間を削って朝マックを買いに行ったり、牛丼を買いに行ったりする
また眠たいからだで食べるジャンクフードがたまらなく美味いんだよなー。
そんな生活をしているものだから、年を取ってくると生活習慣病健診でかならず引っかかる。
もはや、夜勤従事者の宿命なのだ。
普段の我々を他部署の人間は暇な連中だと思ってみているだろう。仕事の大半が待機であるためだ。しかし、それは何もトラブルが発生しておらず、安定運用が行われている証拠でもある。もし我々が顔を真っ青にして走り回るような事態となっていれば、システムの安定運用が行われていないという状態なので、会社の危機ともいえる事態が発生しているということなのだ。
だから、昼間に居眠りしていても見逃してほしい。
夜勤明けでしんどい時もあるのだ。
夜勤明け帰りの電車で居眠りしていたら進行方向とは逆の終点の駅で目を覚ましたことがある同僚もいるほどだ(行って、戻って、さらにその先へ)。
夜中に働く。誰もいなくなった深夜のオフィスで、ひとりポツンと仕事をしている時もある。
幽霊? いや、見たことなんか無い。
たまに終電を逃して、オフィスの椅子を並べて眠っているオッサンがいたりして、声を上げて驚くくらいだ。
みんなが朝出勤して、問題なく仕事が出来ているのも、夜に働いている夜勤従事者たちがいるからなのだということを理解してほしい。
サーバーもメンテナンスする人がいるからこそ、動いているのよ。
24時間365日、フル稼働で動かせるのも、そういった日頃からのメンテナンスがあるからなのだ。
だから、メンテナンスの時間が少し伸びたくらいで、目くじらを立てないでほしい。
と、私は思ったりもする。
そんな夜勤生活をん十年と続けてきたオジサンも10月の人事異動で日勤専門の職場へと異動する。逆に、普通の生活ができるのか不安で仕方ない。
さらば、夜勤生活。そう、これは私の夜勤生活への
夜に働く 大隅 スミヲ @smee
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます