第224話

哀しく…切なげに微笑んだ…あの表情…。


潤んだ瞳は、僕を恨み、憎んでいるようにしか…見えなかった…のに…。


「…僕…に、向け…た…言葉…」


ゆかりは、コクリと頷いた。


「…これは…私の想像でしかありませんが…他の誰でもない、あなたを想い、あなたに届くように紡がれた言葉…だったのではないでしょうか…?」


別れを告げ、預かっておいてほしい…と渡された、しおり…。


新たに、大事な人と一緒に未来あすを生きていくことを決め、幸せそうに笑っていた。


妹ーさゆりの心は…ただ、1人を想い、愛していた。

その心に、嘘や偽りは見られなかった…。


最期まで…。

隼一を想い、自分の想いを伝えたかったに違いない…。


「…妹は…」


「……」


「…さゆりは、きっと…あの時…」


ゆかりは瞳を細め、優しく微笑んだ。


「最期の瞬間…こう、伝えたかったのだと思うのです…」


ゆかりの唇がゆっくり…言葉を紡ぐ。


…えっ…。


隼一は目を見開いた。


目の前にいたのは…。


…さゆりさん…。


紫苑の花束を抱え、隼一を見つめるさゆりの姿がそこには、あった。


未来あすを生きて下さいー…」


優しく微笑む姿と共に…。

そう、言われた気がした。


「…っ」


隼一は、そっ…と瞳を閉じ、追想おもいをはせた…。


紫苑きみをわすれないー…。

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紫苑ーツイソウー✳完結✳ 佐倉 @-starrynight-

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