第223話

「…でも…その度に、フッ…と、蘇る…。あの時の…最期に、僕に向けられた表情が…簡単に死なせないっ…自ら…命を絶つことを許さないっ…と、訴えるように脳裏を駆けめぐるっ…」


…哀しく、切ない微笑み…。

恨むように見つめられた瞳…。


途切れ、途切れに紡がれた言葉…。


…いたかった…。

…ずっと…一緒に…。


あの言葉はきっと…僕ではない。

彼に向けて、紡いだ言葉…。


そして…。


僕に対する恨み…憎しみを込めた言葉…。

当然だ…と、思った。


僕が…2人を別れさせ、一緒いられないようにしたから…。


最期に、紡がれた…聞き取れなかった言葉も、きっと…。


「…くっ…」


手の中にあるブローチを強く握りしめたまま…隼一は額に押しつけた。


鼻の奥がツーンとし、今にも涙が溢れてしまいそうだった…。


「…隼一さま…」


ゆかりは、隼一の名前を呼んだ。


その声やトーンは、さゆりの声やトーンに良く似ていて…。

さゆりを彷彿させた…。


トクンッ…。


胸が切なくなるのを感じた…。


「…っ…」


隼一は顔を上げ、ゆかりを見つめた。


「…私は…さゆりが紡いだ言葉は、全て…あなたに向けた言葉だと、思うのです…」


「…っ!!」


隼一は息を飲む。


思ってもなかった…。

そう、思うはずがなかった…。

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