ハイファンタジーのストーリー

今回はついに、ハイファンタジーのストーリーについて書いていきます。

やっとたどり着けました!



▼コンフリクトの話について


ハイファンタジー特有のストーリー構成を語るにあたり、あらためてキャラクター造形における三層のコンフリクトを整理しておきます。


またまたコピペですが。


『キャラクター内面のコンフリクト』

一人の中で矛盾、破綻しているところです。

例えば、アグレッシブだが暴力的になりやすいところを気に病んでいる人。

職業だと、優しすぎる殺し屋、コミュ障の交渉人、など。

コツとしては、『長所と短所が裏表の人格』を描くと、やりやすいと思います。


『キャラクター同士のコンフリクト』

主人公と、それを取り巻く人々のミッションがぶつかることで生じる相剋や軋轢です。


『世界とのコンフリクト』

個人と使命の相剋と軋轢。

役人なのに犯罪者を守るとか。

海が嫌いなのに船旅をするとか。

暗いのが嫌いなのに、世界が真っ暗だとか。


『統合』

これらのコンフリクトの両端を統合し、

『A-B=0』だったものを、

『A*B=X』にします。

このXが作品のテーマであり、鍵になってきます。

なお、物語における統合とは、ある意味でバランスを見つけるってことであり、『妥協』『発想転換』『変化』などいろいろあると思います。人生のように、、

『元気キャラだが短気→元気キャラで優しい』になった!とか。これも統合というか、自己理解と進歩です!



これが僕の書いてきた、コンフリクトの話です。

ストーリー論はいろいろあると思いますが、まずこのコンフリクトを念頭に組み立てていく前提で話を進めます。

あらためて、『世界とのコンフリクト』を描くことが、ハイファンタジーの醍醐味と位置付けているわけなので。



▼ストーリーの基本的な考え方


基本的には、作者が作品の中でやりたいことに挑み、キャラクターがイキイキとコンフリクトに挑んでいるのであれば、細かいことは気にせず書いていけばよいと思います。


世の中にはいろんな作劇法があると思いますが、僕の思うに作劇法とは、キャラクターのコンフリクトを効果的に演出するためのメソッドだと思っています。

本稿で扱っているのは、コンフリクトとその統合そのものなので、わざわざ無理に既存の作劇法を当てはめなくても、面白いものが書けると思います。

コンフリクトと統合の理論は、キャラクター造形、テーマ設定、ストーリー展開の、全てを包含する概念でもあります。


……とはいえ、それでも不安だとしたら、以下のように取り組むとよいと思います。



▼作劇法の取り入れ


僕が作劇法に対して思うのは、『キャラクターが確立してから作劇法を取り入れる。キャラクターに合わせてプロットを直す』くらいです。

キャラクター造形と、コンフリクトが設計できていれば、『作劇法のタスクに引っ張られて人工的になる』のは回避できると思います。


ちなみに、作劇法の扱いについては以下の記事も書きました。

『作劇法は映画のためのもので、小説にはミスマッチな場合がある』という独自論点のものです(・_・;


作劇法に注意! 小説は映画じゃない

https://kakuyomu.jp/works/16818093083505085063


コンフリクト中心の組み立てをすると、ストーリー展開も内包されているので、そこまで既存の作劇法に頼る必要がなくなってくる気はします。



▼コンフリクトのストーリー展開


さて、今回の目玉? の『コンフリクトのストーリー展開』について書いていきます。

これまで語ってきたコンフリクトについて、ストーリーに展開させる方法を説明します。


『世界とのコンフリクト』

世界観の特殊な要素や魔法の特性から、『どのような主人公が一番ドラマを産むか』を考えます。

その世界の問題や課題に立ち向かうために、もっとも変化する主人公はどんな人物でしょうか?

どんな脇役がいると、世界観が深掘りされるでしょうか?

クライマックスは、この世界とのコンフリクトの解決や、受容が描かれるときれいに着地します。

ストーリーの中では、何回も『世界とのコンフリクト』に挑み、しかしクライマックス以外では克服はできません。


『内面のコンフリクト』

主人公の内面には、長所にも短所にもなる、ひとつの特性があります。

なぜそのような性格になったのか。よい面が顕在化するとどういう言動ですか? その逆は? 欠点を隠すために、どんなキャラクターを装っている? このようなことがストーリーに反映されてきます。

なお、クライマックスにおいては、世界とのコンフリクトと内面のコンフリクトが、『同時に解決する』ようにすることが重要です。

こうすると、(広義の)旅の意味に説得力が持たせられます。

例えば、『大嫌いなピーマンを食べると無限の魔力が湧いて隕石を止められる』みたいな、、


『対人コンフリクト』

主人公に対しシナジーのある脇役を設定します。

主人公を補完する人物、または反目する人物など。

彼らは旅の中で、それぞれが変化しながら、お互いの理解を深めていきます。

キャラクターが『いる』と、素敵なエピソードが生まれると思います。

人との関係性の中で、刺激を与え合うことでキャラクターたちは変化していきます。

(あんまり、成長って考えないようにしています。線形の正統進化だけではないので)


このようなコンフリクトを元にしたストーリー展開を考えていくと、キャラクターをいきいきと描きながら、無理のない物語を描けると思います。



▼ストーリーラインの管理


ここで、割と実践的なテクニックの紹介です!

それは、『ストーリーラインの管理』です。

特に込み入ったハイファンタジーでは、どのようなストーリーラインが走っていて、どのように統合・関連してゆくかの管理が重要です。


『キャラクターごとの変化』『どんでん返し要素』『世界情勢』など、物語の中で変化してゆくことを明確にして管理します。


例としては、以下のような事柄を項目として書き出し、章ごとにそれぞれ、どう描写するか決めてゆくといいと思います。



▼ストーリーライン管理リスト例


『A太郎の決意』

主人公のA太郎はピーマンが大嫌い。そのせいですべてにおいて自信がない。一方で、人の弱いところに寛容で共感性が高い。各エピソードでは、この問題を散りばめる。クライマックスではピーマンを食べて魔法で隕石を止める。


『B子の失踪と帰還』

B子は、A太郎にピーマンを食べさせないといけない役目。しかし使命の重圧に耐えられず、その兆候が常に描かれ、失踪する。


『どんでん返し』

C三郎が黒幕であるため、各エピソードでは、ひとつずつヒントを描く。パーツとして、『⚪︎⚪︎』『⚪︎⚪︎』『⚪︎⚪︎』などがある。


『世界情勢』

⚪︎国の中では徐々に革命の機運が高まり、革命が勃発する。


こういった、物語の中で展開してゆくことを、切り出して管理しておくと、コンフリクトの描写や情報管理が楽になり、どう展開させても破綻しにくくなります。



▼着地について


クライマックスでは、日和らずに『最高のドラマ』を描きましょう。

世界とのコンフリクトを扱っていると、主人公にはありえないほどの変化を強いるかもしれません。

でも、そこは心を鬼にして、主人公が諦めるまで付き合いましょう。

その説得の道筋が、主人公のストーリーラインなのです。

『いい加減ピーマン食べれるだろ?』と作者が思っても、なかなか食べてくれません。

あの手この手でピーマンを提案し、それでもダメなら、ピーマンを刻んで誤魔化すとか、ピーマンを食べなくていい方法を考えるとか、なんとか手を考えて、主人公に納得してもらいます。

また、主人公がピーマンを受け入れることが、世界の問題を解決し、主人公自身が新たなステップに進むことを意味します。



今回はこんな感じで、ハイファンタジーのストーリーについてまとめてみました。

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本格ハイファンタジーを書いてみよう! 浅里絋太 @kou_sh

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