第2話
りっちゃんと同じクラスな事に安堵しながら、私は自分の席にカバンを置いた。
席も近くて喜ぶ私達の耳に、ザワつく生徒達の声が届く。
「え、あの人タメ?」
「つか、デカすぎじゃね?」
「ちょっと怖いよね……」
「ヤベェな……」
クラス中が騒がしくなり、私はそちらに視線を送る。
「おぉー、彼めちゃくちゃ大っきいね」
りっちゃんが珍しいものを見るみたいに、楽しそうな声で言う。
少し居心地悪そうに教室へ入って来る、誰よりも大柄の男子生徒が、私の隣の席にカバンを置いて私に気づいた。
「同じクラスだったんだね。先輩かと思った」
「よく言われる」
困ったように笑った彼の表情に、私の心臓が少し震えた気がした。
りっちゃんと二人で朝のお礼を言って、お互いの自己紹介をする。
彼は
大きな彼はどうしても迫力、威圧感があるからか、周りのクラスメイトが近寄って来ない。
「ほら、早くしてよ。私達まで遅刻すんじゃん」
「まだ大丈夫だってー」
「出た、
ワイワイと仲良さそうに入って来る、男子一、女子二のグループ。
ザワつくクラスメイト達の異変に気づいた、三人のうちの一人が、私達の方に歩いて来る。
「
「え? クマ、同じ学校だったの?」
同じように他二人もこちらに駆け寄って来る。
月熊君を知っているみたいだ。
「何か……デコボココンビだね、二人」
騒ぐ二人を気にする事もなく、叶と呼ばれた女子が私と月熊君を交互に見て呟く。
フワフワの柔らかそうな色素の薄い茶髪に、クリクリした大きな目と小さく果実みたいにプルンとした唇が特徴的な、私程ではないにしろ、彼女も小柄で華奢だ。そして何より物凄く可愛い。
月熊君の机に張り付いていた二人が、小柄な女子の声に反応してこちらを見る。
制服のリボンを緩めて、もう既に制服をラフに着こなしている、ポニーテールの明るく活発そうな、少し吊り目の勝ち気なイメージの女子と、明るい髪色で両耳に一つずつピアスを空け、少し軽そうで人懐っこそうな男子。
彼はきっとモテるんだろう。
「ホントだ。クマがいると、彼女がもっと小さく見えるー」
その後はあっという間に距離を詰められ、自己紹介をする流れになった。
小柄な女子は、
そして、明るい髪色の男子、
三人は幼なじみで、月熊君と同じ中学だという。
「ねぇねぇ、りっちゃん彼氏はいんの? いないなら俺とか、オススメだよー?」
「は? あんたが一番オススメ出来んわ」
「ほんと、譲だけは絶対勧められない」
「いやいや、お二人さん。それは普通に酷くね?」
さすがは幼なじみ。息ピッタリで仲良しだ。
愛想笑いすらしないりっちゃんに苦笑しながら、月熊君と目が合う。
「賑やかで、何か、楽しいね」
「あぁ、そうだな」
言って、また優しく笑った。
私は、出会ってばかりの彼のこの微笑みに弱いのだと気づいた。
何だか、心が温かくなるみたいな、見守り、包まれるみたいな優しい笑み。
「クマとウサギ? 小鳥?」
「どっちにしろ、食べられないように気をつけなきゃだよー? 小鳥ちゃん」
見谷君がニヤニヤしながら言った。
「変な事を言うな、見谷」
月熊君に諭され、イタズラっ子みたいに笑った見谷君は自分の席へ。それを合図にしたかのように、弥依ちゃんと叶ちゃんの二人も戻って行った。
「見谷がすまない」
「ううん。それより、何で月熊君が謝るの?」
「まぁ、それもそうか」
何だろう。この妙に癒される空間は。
彼の持つ空気というか、放たれるオーラというか、威圧感とか迫力より、それ以外の独特な雰囲気の方が、私は気になってしまった。
大きな彼と小さな彼女 柚美。 @yuzumi773
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。大きな彼と小さな彼女の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます