荒々しい辺境の空気と、胸が高鳴る冒険者たちの熱が伝わってくる物語。特に、圧倒的な存在感を放つS級冒険者・シドの登場シーンには鳥肌が立った。「龍王の威」——まるで戦場そのものが震えるような圧倒的な殺気の描写は、まさに神話の一幕を見ているかのよう。
ユートの未熟さと潜在能力が絡む展開も見逃せない。確かに規格外の力を持っているけれど、実際の討伐後処理を知らず、魔核の危険を放置するあたりがリアルで、生きたキャラクターとして魅力的に映る。そしてシドの監視という形での関わりが、師弟関係へと発展するのかどうかも気になるところ。
剣戟の緊迫感と壮大な英雄譚の気配が交差するこの物語、続きを読まずにはいられない!
その村には「銀龍」と呼ばれ、畏れられる一人の青年がいた。その主人公の姿はまるで少女のようだった。主人公は村人から愛され、敬われ、何よりも頼りにされていた。
そんな男がいる村に、一人の謎の男がやって来る。魔力量だけは桁外れたモノを持っていたが、その他は何も一人ではままならず、意味不明な言葉を発する男だった。その男は前世で落ちこぼれていたが、こちらの世界に来れば英雄になれたはずだとか、口にしていた。しかも美しい女性と会うたびに、俺のヒロインにやっと会えたかのようなことを口走る。さらに、自分の不遇を嘆き、こんなはずではなかったと後悔しているようだった。
そんな明らかに面倒な男を預かることになった主人公は、二つ名に恥じない仕事をしては、村の人々に感謝され、他のギルドからは尊敬されていた。
しかし、村に厄災が訪れる。山一つあるかのような巨大な亀のモンスターが、村に迫っていたのだ。主人公と村人たちはこの厄災に立ち上がる。ここに、「龍VS亀」の戦いの幕が切って落とされたのだ。激闘の末、何とか勝利したのだが……。
セルと呼ばれる魔物の核のような物で村は沸いてた頃、主人公にある老爺が訪れていたのだった。果たしてこの人物は敵か、味方か?
謎の男、おそらくその言動から、本来の異世界転生物では主人公であったであろう男は、これからどうなっていくのか?
そんなことを考えさせられる珍しい一作です。
銀龍と呼ばれる主人公のバトルシーンはシリアスですが、村人とのやり取りはコミカルで、バランスが取れています。
ただの異世界転生物に飽きた方に、特にお勧めします。
是非、御地一読下さい。
この作品は現地主人公ものの異世界ファンタジーですが、特筆すべきなのは異世界転移または転生してきたと思われる、テンプレ感強めのなろう系主人公っぽい人物がメインキャラクターとして登場することにあるでしょうか。
そのような作品が多くあることは存じています。しかし、たいていは単純な噛ませ犬的な役割に甘んじていることが多いのではないでしょうか。噛ませ犬的な部分もありますが、この作品ではそのキャラクターへの愛を感じました。
テンプレにもテンプレの良さがあると思います。それを完全に否定せずリスペクトし、ストーリーにうまく組み込んでいるのが、好印象でした。
現地主人公の方については、S級冒険者でチート級の強さを誇り、なによりセリフや演出が一々かっこいいです。なろう系主人公っぽい人物が三枚目的な役割を担い、ますます現地主人公がかっこよく見えてくるような、そんな図式です。
異世界ファンタジーのテンプレ好きの方も、そうでない方にも広くおすすめできる作品だと思います。