第8話
「主上はまだ、お若い頃に香子の伯母上を我が妃にと望まれていたらしくて。もともと、麗景殿太后(れいけいでんのおおきさき)様が伯母上の入内を強く、希望なさったのです。といっても、僕の生まれる前の話ですが」
私は意外なことだらけで、驚きすぎて、唖然とするしかなかった。
まさか、母様がそんな高貴な方に好かれていたとは。
信じられなかったのは言うまでもない。 「…けど、母様はそんなこと、一言もいってなかったわ。規久殿もそのお話、どこで聞いたのですか?」私は御簾をまくり上げて、外へ出たくなる衝動を抑えながら、尋ねてみた。
規久殿は肩をすくめながら、こう答えた。
「母上や父上に聞いたんですよ。まあ、母上も昔、主上の妃候補でしたから。その関連で知っておられたようです」
私はへえと言いながら、考えてみた。
母様と基子叔母様が今上様の妃がねだったのも初耳だった。私は本当に世間知らずだなと、恥ずかしく思った。
確か、今は基子叔母様の腹違いの妹君の久子(ながこ)様が入内なさって、今に至るはずだ。
白菊に雪は降り積もる 入江 涼子 @irie05
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