第8話
「主上はまだ、お若い頃に香子の伯母上を我が妃にと望まれていたらしくて。もともと、麗景殿太后(れいけいでんのおおきさき)様が伯母上の入内を強く、希望なさったのです。といっても、僕の生まれる前の話ですが」
私は意外なことだらけで、驚きすぎて、唖然とするしかなかった。
まさか、母様がそんな高貴な方に好かれていたとは。
信じられなかったのは言うまでもない。 「…けど、母様はそんなこと、一言もいってなかったわ。規久殿もそのお話、どこで聞いたのですか?」私は御簾をまくり上げて、外へ出たくなる衝動を抑えながら、尋ねてみた。
規久殿は肩をすくめながら、こう答えた。
「母上や父上に聞いたんですよ。まあ、母上も昔、主上の妃候補でしたから。その関連で知っておられたようです」
私はへえと言いながら、考えてみた。
母様と基子叔母様が今上様の妃がねだったのも初耳だった。私は本当に世間知らずだなと、恥ずかしく思った。
確か、今は基子叔母様の腹違いの妹君の久子(ながこ)様が入内なさって、今に至るはずだ。
白菊に雪は降り積もる 入江 涼子 @irie05
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。白菊に雪は降り積もるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます