第7話
「確かに、そのような話は出ていますよ。姉上は幼い頃から、今東宮様の許嫁でしたから。ご生母の二条のお后(にじょうのきさき)様たってのご希望でしたので」
二条のお后様はかつての藤壺女御様のことである。
現在は皇后となられていて、今東宮のご生母として、政に影響を与えておられた。
「もし、私が小松の姉君より先に入内したら、次の后の位を巡って争いになりますね。そうなると、父様と義隆叔父様が対立してしまう」
私はまた、ため息をつきながら、規久殿に言った。
規久殿は顔をしかめながら、意外なことをいってのけた。
「…姉上は入内を拒んでいます。香子の叔母様が主上に片思いされていたことを知っていますから」
私はそれを聞いて、驚きのあまり、小さく声を上げてしまった。
母様が今上様に片思いをされていたって。
嘘でしょと叫びそうになったのを何とか、こらえながら、抑えた低い声で訊いた。
「母様が今上様に好かれていたって。何故、知っておられるのですか?私もそんなの、初耳です」
すると、規久殿は苦笑してみせた。
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