第6話

 喧嘩を始めそうになったのが嘘みたいに、二人は和やかに再び、話し出した。

「菊子殿は最近、公達からの文がめっきり、来なくなったそうですね。熱心に送ってきているのは、もう三、四人くらいだとか」

「…確かに、私にくる文は少なくなってきたわ。でも、お返事を出すのも億劫になってしまうのです。それに、入内話もあるから、お祖父様や父様は返事を出さなくていいとおっしゃっていますし」

 扇で顔を隠しながらいうと、頼忠殿と規久殿は意外そうに、目を少し見開いた。 「入内話ですか。もう、そんなところまでいっているとは」

 私はいうんじゃなかったと軽く、息をついた。

 頼忠殿は笑みを消して、真剣な顔で考え込んでしまった。

 規久殿も驚いているのか、黙ったきりだった。

「…あの、規久殿。あなたの姉君の小松様も入内話が出ているのでは?」

 あえて、実名は出さす、愛称で尋ねてみた。

 規久殿は、弾かれたように顔を上げた。 「…姉上がどうかしましたか?」

「いえ、姉君にも入内話が出ているのかと、申し上げたのです」もう一度、繰り返すと規久殿はやっと、納得できたようだった。

 ああと言いながら、答えてくれた。

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