鳳凰飛翔~揚貴妃異伝~
入江 涼子
一章 姉妹
第1話
時は唐の時代、玄宗皇帝の御世である。
都の長安の片隅に寂れた邸があった。
その邸には美しい双子の姉妹が住んでいた。
姉は凰蘭(おうらん)、妹は叙英という。姓は威(い)といった。
長安にはかなりの数の異国人が住んでいた。
胡人と呼ばれる人々が多かった。
さて、凰蘭は明るく活発な当年とって、二十一歳の女性である。
裁縫が得意で刺繍や衣服を仕立てる仕事ー仕立屋をやっていた。
その収入と亡くなった両親の遺産で毎日を細々と暮らしていた。
「…姉さん、毎日ごめんなさいね。薬代が馬鹿にならないのに」
せき込みながらも、弱々しく謝ってくる叙英に凰蘭は笑いながら答える。
「いいのよ。気にしないで。今は病を治すことだけを考えてね」
「わかったわ、姉さん」
頷いてきた妹にお湯で煎じた薬湯が入った椀を手渡した。
苦そうな緑色の薬湯ではあるが、叙英は我慢して受け取る。そして、少しずつ飲み下していく。
鳳凰飛翔~揚貴妃異伝~ 入江 涼子 @irie05
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