第21話

21




あの日、倒れた俺をおぶってバス停に向かい家まで運んでくれたのは翔さん。


そのあと、何日か寝込んでる間、毎日様子を見に来てくれたのは潤くん。


2人に説明が出来るまでになったのは夏休みの終わり頃。



俺はカズヤさんの生まれ変わりで


相葉さんはもうずっと長い間…


カズヤさんの生まれ変わりを探して彷徨っていたんだ。


変わらないよと…未来永劫続く愛のプロポーズを過去に受けていた事…


身体がそれを覚えていた事…


現実の世界の俺の身体はこれ以上相葉さんと関われないであろう事…


俺を見つけたのに…相葉さんは居なくなってしまった。

酷く辛い現実に塞ぎこんでいた。

夏休みが明けて初日。


翔さんが前日に夏休み明けからは学校に来いと言った。


翔さんは出席日数も気にかけてくれたり、学校からの連絡物を届けて貰ったり…


迷惑をかけるにも程があるってもんだった。


だから、俺はまるで根でも生えてしまったような身体とベッドを引き離したんだ。


まだまだ暑い朝だった。

躊躇した時間があったせいか、完全に遅刻だった。

自転車に乗り坂道を登る。

山の中腹にある学校に向かって。

角度によって見え隠れするグレーの壁をした病院を横目にハンドルを握りこんだ。




校門の手前まで漕いで力尽きて降りた。

自転車を押しながら歩く。息を整えながらアスファルトに落としていた顔を上げた。

前方にスラっとした細身の男性が歩いてる。

こんな時間に…生徒じゃない。

スラックスにカッターシャツ。腕にジャケットをかけて、校門前で立ち止まり校舎を見上げている。

自転車の車輪の音に気づいて男性が振り返った。




ガシャーン!!!


自転車が倒れる音が響く。


『あぁ…大丈夫?!よっと…はいっ!持てるかな?ハンドル』

倒れた自転車を起こして手渡してくれる。

「ぁ…ぁ…はい…」

酷く動揺していた。

『…君、ここの生徒だよね?』

少し屈んで俺を覗きこんでくる。

「…はい…」

『クフフ…こんな時間にここに居たんじゃ…君、遅刻じゃない?』

特徴的な笑い方に俺は俯いてしまう。

グッとハンドルをキツく握った。

『あぁ…怒ってんじゃないんだよ?大丈夫?あっそうだ!俺、今日からここで先生します!相葉マサノリって言います。よろしく』

「あい…ば…ま…」

『雅季って書いてマサシよく間違われるんだけど…ってそれはいいや。君、職員室教えてくれないかな?』


「…初めまして」

『…え、あぁ』

「…相葉さん…俺…二ノ宮和也です。…和です。よろしくお願いします」


俺はハンドルから手を離し差し出した。


『…和…あ…初めまして…よろしく…』

相葉さんは自分の服で手のひらを拭いて差し出してくれた。


ゆっくり握り合う手。

見つめ合う視線。


俺の手が震えていた。

相葉さんの手も



何故だか震えていたんだ。


俺が軽くその手を


引き寄せた。


俺たちはどちらからともなく目を閉じて



唇を重ねた。


空が青くて   青くて…

またあなたを連れ去るんじゃないかと

その白いシャツを握りしめる。

震える俺のその腕を優しく撫でながら彼が言う。


『俺たちは…どうやら初めましてではないみたいだね。…和…』


「そうだよ…俺達…やっと…会えたんだ」

『あぁ…やっと…会えた。…』


暑い夏の終わり

長い指が俺の髪を撫でた。

涙が溢れて止まらない。

これはあの時の悲しみの涙じゃないよ?

長い指が涙を拭って…俺をそっと抱き寄せた。


俺たちは長い年月を経て生まれ変わり出会う。


そう、何度も何度も繰り返し。


未来永劫…変わる事のない



愛だから。



                                                 END

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