呪物か偶然か

TatsuB

第1話 見ただけで

この世の中には、科学では説明できないものも存在する。その一つが「呪物」であり、文字通り「呪われた物」である。


例えば、有名なものとして「バズビーズチェア」という椅子がある。これは、この椅子に座った人々が次々と命を落とすことで「呪われた椅子」として知られている。

他にも「アナベルの人形」があり、これもまた人を死に至らしめる「呪われた人形」として呪物扱いされている。


このような呪物は他にも多数存在し、実際に現物を見ることはできなくても、写真やネットでその画像を見ることができる。そして、画像を見るだけで少しぞっとする人もいるかもしれないが、直接的な被害を受けることはないだろう。

しかし、中には画像を見るだけで不幸に見舞われるとされる呪物も存在する。


これは、そんな呪物を見たある人物の話である。

彼はたまたまホラー動画を見ている中で、そのような呪物が存在することを知った。興味本位で調べると、画像はすぐに見つかり、彼が抱いた率直な感想は「気味が悪い」という一般的なものだった。


数日後、彼の地域に台風が接近した。だが、被害は停電程度で特に大きな問題はなかった。しかし、彼の頭には例の画像がよぎった。それでも「たまたまだろう」と、偶然だと片付けた。むしろ、仕事が休みになり、ラッキーだとさえ思った。


それから、再び好奇心からその画像を検索して見てしまった。次は何が起こるだろうと少し期待しながら。

すると後日、彼は頭痛がし、熱が出たため病院に行ったところ、最近流行している病気にかかっていた。しかし、命にかかわるものではなく、病気になるのは誰にでも起こり得ることだったので、これも偶然だと考えた。むしろまた仕事を休むことができたので、彼は「ラッキー」とさえ思った。

ここまで来ると、彼は「次は何が起こるのだろう」といった気持ちになっていた。そして、またその画像を繰り返し見てしまう。

そのたびに小さな不幸が起きつつも、彼にとっては結果的に好都合なことが続いた。


そんな状況が続いたため、彼は友人たちにこの話をしてみた。すると、この話をきっかけに仲良くなった女性が現れた。

時が経ち、彼はその呪物のことを忘れ、彼女と結婚することになった。結婚の際、彼女と出会ったきっかけが呪物の話だったことを思い出し、半ば冗談のように「何が呪われるだ」と笑った。


そして、また好奇心からその画像を見てしまった。すると、子どもにも恵まれ、呪いどころか幸せばかりが訪れた。彼は「この画像は、自分を幸せにするものだ」と思い込んでいた。


だが、最初に言った通り、これは呪物である。そして、「不幸もありつつ、彼にとっては都合の良いことが続いた」とも述べた。

そう、確かに「不幸の面」もあったのだ。しかし、彼は呪物のことを忘れ、あるいは信じていなかった。


彼は、その呪物の画像を見ることが習慣化してしまった。たとえ悪いことが起きても、呪物のせいだとは思わず、ただの一般的な不幸と考えていた。そして、多くの人々が「偶然の重なりで呪物扱いされているものだ」と考えるように、彼もそう信じていた。


しかし、偶然なのか呪いなのか——

彼の子どもは生後1年も経たないうちに病気にかかり、残念ながら亡くなった。すぐに妻も癌を患い、数ヶ月でこの世を去った。


彼は、人生で最も幸せな瞬間を手にしたすぐ後に、人生で最も大きな不幸を味わった。


彼は、妻との思い出を振り返り、その出会いが呪物に関する話であったことを思い出す。


これは偶然なのか、呪いなのか——

だが、今となってはそんなことは彼にとってどうでもよいことだ。彼は、これからの人生を自ら捨てたのだ。


これが、呪物の写真を見るだけでも呪いにかかると言われる、


一つの呪いの物語である。

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