神様の悩み

凪紗夜

神様の悩み

 懊悩するときがある

 小説のなかの登場人物たちに

 本当にこの物語の終わりはそれでいいのか問いたいとき


 そんなときは星明りを頼りに歩く

 森の中に忽然と、闇に輪郭が浮かび上がる、遊具たち

 昼間とは違う、私だけの場所が誘っている


 私はそこでブランコに乗って煙草を吸って

 私が創り出した架空の人間の心情と

 物語の終わりに思考をめぐらせる


 ブランコに乗る私の頭上には

 無数の星々がきらめいていて、

 私の思惟は、無数の人間の思惟の中のひとつでしかないのだな

 と、思ってみる


 この瞬間も、私は歳をとって、人間みんな、死に向かっている


 数多くある思惟のひとつが

 文字群を操り

 想像上の世界を作り上げて

 そこに住む人物の些細な悩みさえ

 作り出そうというのだから

 私の悩みは神様の悩みといっしょ


 私が神様だったら、

 愚かな人類は

 星と星の衝突で消し去るけれど


 そんな終わりは訪れないから

 いつのまにか私は私の小説のなかで、終末を目論んでいる


 だからやっぱりこの結末でいいんだって

 答えがでる

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神様の悩み 凪紗夜 @toumeinagisa

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