第59話


ぎゅっと肩を抱き寄せられて、



「このアイドルさまは……」



私は小さな声で独り言。



「ん?」



彼には聞こえなかったみたいだけど、



「ううん♪何にも。



嬉しすぎて涙が出そうって言ったのよ」




「ホントかよ」



禅夜は疑わしそうにしてたけれど、



「一つ聞いていい?」



真剣な顔で聞かれて、私は唇を引き結んで「何?」と目だけを上げた。



「ケータイナンバー教えて」



「私も教えて。岩本 禅夜って本名」



「本名」




私たちは顔を合わせて思わず笑った。



「なんか色々順番が狂ってるけど、いーや。



だって今日から環が俺のお嫁さんだから」



無邪気に笑って私をさらに引き寄せると禅夜はその印象的な目をゆっくりと閉じた。




「今日は昼までオフなんだ。二人でゆっくり寝ようぜ」



「うん」







ダブルベッドに二人、



ようやく埋まった席を確かめるように私たちは抱き合って





眠った。









望めば、わたしの席にはあなたの姿。




これからは二人―――




ずっとずっと。








七年よりうんと永い永遠と言う月日を



これからは二人。




……と言いたいところだけど、







「……でも、何で私の薬指のサイズ知ってたの?」



「ああ、だって七年前のインタビューで握手交わしたじゃん?そのときリサーチ♪」



リサーチ…って…




やっぱり分からないわ





私のアイドルさまは。






~END~



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

7回目の満席 魅洛 @miracle78

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ