第12話

「……ところで、気になっていたんだけど……あなた、最初に私にあったとき、自分は王子だって言ってなかったけっけ?」


「ん?」


「誤魔化されないわよ。答えなさい」


「えー? でも、あながち間違いでもないよ? 王様も王子様もあんまり変わらないし? 姫も王妃も変わらないし?」


「大違いだよ!!」


「違わない違わない。王子ってことはいずれ王位を継いで王様になるものを指す言葉だよ? ほら、現在王様の俺は嘘なんてついてないでしょ?」


「私と会ったときのことを言ってるのよ!」


「あの時はギリ王子だったよ? すぐに王位を継いでしまったから」


「その時に言ってくれればよかったじゃない!?」


「君の周りは知っていたからまぁいいかなーと思って?」


「思うなっ!!」



 そんなこんなで、私は結婚してすぐに王妃という立場を押し付けられ、毎日毎晩、あれやこれやの勉強やら、夜のことまでしっかりとさせられ、バッチリ妊娠してこどもまでしっかりと授かりましたよ。


 もう二人目だよ。なんなのこのスピード、怖い。



「こども、あと何人欲しい? 俺はね、できればたくさんたくさん欲しい」


「も、もういいっ!」


「だって、たくさんいればいるほど君を俺に縛りつけることができるからさ。だから、夜もよろしくね?」


「しっ、しばらく締め出してやる!!」



 そんな私の叫びはしかしは叶うはずもなく、毎夜毎夜私はあの男の手によって散々甘い悲鳴を上げさせられることとなったのだった。


 ……お願いだから、やめて…。





side:猫の王様ケットシー



 手に入れた彼女を手放さないと決めた。


 だから、逃げ出されないようにこの世界に縛りつけ、期限を設けられてその期間に様々な手段を用いて彼女を囲い込み、ようやくその手に溺れされることができた。


 助けてもらったというのは嘘ではない。事実だ。


 けれど、彼女がそれを覚えていないなんてわかり切っていることだ。だって、あのときの俺は本当にただの猫だったから。


 なんのきっかけなのかは今だにわからないが、地球とこの猫の王国はたまに繋がるらしい。ここにきた猫たちは普通の四つ足の獣姿と、人に似た姿のふたなりを持つことができるようになる。


 歓喜した。これで俺は、あの子を娶ることができ、孕ませることができ、縛りつけることができると。


 散々俺の手で、体で、甘い甘い悲鳴をあげていた彼女は、今は俺の腕の中で眠りに落ちている。


 それに微笑ましさがこみ上げて、眠っている彼女を起こさない程度の力で、ギュッと抱きしめた。



「ようやく、俺のものになってくれて、ありがとうね、ひまり。もう絶対に離さないから」



 囁いて、彼女の額に、優しく口づけを落とし、そのまま俺も一緒になって眠りについたのだった。

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そんなことになるとは聞いてないっ!! 妃沙 @hanamizuki0001

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