第4話
▶第1話のシナリオ
◼️場所(都会のど真ん中/クリスマスイブの夜)
ビルの大型ビジョンに年末特番の歌番組が映っている。
立ち止まって見上げる通行人の中に、みちる。
ものすごい形相で画面を睨みつけている。
みちる<去年まであそこは、私の居場所だたのに……!!>
番組MC「さて、続いては今年の4月にデビュー。先月発売されたファーストアルバムが4週連続ランキング1位と、大変人気のこの方!」
MCの横に立っているハルカを見て、悔しそうにみちるは唇を噛む。
みちる<あいつさえいなければ……!!>
女子高生A「ハルカでてるじゃん!かわいい!!」
女子高生B「髪短くなってる!ボブもかわいい!!」
会社員A「ハルカちゃんはかわいいなぁ!最近こんなに透明感のあるアイドルらしい娘はいないよなー」
会社員B「歌も上手だしな!俺の息子もファンなんだよ。まさに、国民的美少女アイドルって感じだよな」
みちる<どこがよ!! どうせあれよ、事務所の力つかって色々と整形とかしてるのよ!! そうに決まってるわ!!>
番組MC「ハルカさんで、デビュー曲 『HARUKA』 。そして、自身が出演されていますドラマの主題歌 『グローリーデイズ』 のスペシャルメドレーです!どうぞ!」
みちる<絶対に、あいつの秘密を見つけて、芸能界から追放して見せるわ!! 見てなさいよ!!>
みちるは不敵な笑みを浮かべながらテレビ局に向かって歩いていく。
◼️場面転換(テレビ局/ハルカの楽屋)
楽屋に設置されていたロッカーに無理やり隠れるみちる。
みちる<————と、思ったのはいいものの……なんで……なんでもう戻って来たのよ!! 早すぎでしょ!?>
ハルカと番組スタッフが話しているのを、隙間から息を殺して覗き込む。
みちる<まだ戻って来るまで時間あると思ったのに! なんでよ!?>
スタッフ「いやー、今日も最高だったよハルカちゃん!」
ハルカ「ふふ、ありがとうございます」
スタッフ「今日はクリスマスイブですけど、なにか予定あるの?」
ハルカ「ないですよー!」
スタッフ「またまたぁ……こんなに可愛いんだから、彼氏の一人や二人くらいいるでしょ?」
ハルカ「いないですよ! アイドルは恋愛禁止ですからね!」
ハルカにっこりとアイドルスマイル。
スタッフ「そっかー……そうだよねぇ」
ハルカ「あの、そろそろ着替えるので……」
スタッフ「ああ、ごめんごめん。それじゃぁ、また来年もよろしくね!」
ハルカ「はい、よろしくお願いします!」
みちる<もう、なんでもいいから、早く出て行って!!>
スタッフが退出し、ハルカは大きなため息を吐きながらアイドルスマイルからスンっと真顔に戻る。
ハルカ「はぁ……もう疲れた。さっさと帰って、寝よう」
上の服を脱ぎ、パットがたくさん入った偽乳ブラジャーも外し、上半身裸になるハルカ。
着替えを取るためみちるが入っているロッカーに手を伸ばす。
みちる<えっ……ちょっと、こっち来る!! こっち来る!! 開けられる!? っていうか、あれ……?>
ロッカー開けられる。
みちる<ハルカ、胸……————>
ハルカ「…………」
みちる「…………」
目があう二人。
しばし沈黙の後、同時に叫ぶ。
みちる&ハルカ「ぎゃああああああああああああああああ!!!」
とっさにロッカーを閉めるハルカ。
ハルカ「なに……えっ? なんで……!?」
みちる「ご、ごめんなさい……その……見るつもりは————」
ハルカ「いや、見ましたよね!? っていうか、見えてますよね!?」
叫び声を聞いて、ユキ姉が楽屋に走って来る。
ユキ姉「なに!? ちょっと、今の叫び声どうしたのハル!!」
ハルカ「ゆ、ユキ姉さん!! な、ななななんでもないよ!! 気にしないで!!」
ハルカみちるをかばうようにロッカーに背を向けて立つ。
ユキ姉首を傾げながら近づく。
ユキ姉「なんでもないわけないでしょ!? 何か隠してる? そこを退きなさい……」
ハルカ「な、何にも隠してないってば! 気のせいだってば!」
ユキ姉「いいから、どきなさい!!」
ハルカ「あ……」
ユキ姉、ハルカを押しのけてロッカーを開ける。
目があう二人。
ユキ姉「…………」
みちる「…………」
目があう二人。
しばし沈黙の後、同時に叫ぶ。
みちる&ユキ姉「ぎゃああああああああああああああああ!!!」
みちる<なにこれ、デジャブ!?>
ユキ姉「誰よこの子!! ハル、アイドルは恋愛禁止だって言ったでしょ!? クリスマスイブだからって、女の子楽屋に連れ込んじゃダメでしょ!? バレたらどうするの!?」
ハルカ「違うって!! 誤解しないで! それに、この人はみちるさんだよ!! 栗原みちるさん!! 一昨年のレコ大新人賞の!!」
ユキ姉「えっ!? あ、ああ、本当だ!」
みちる<知ってたんだ……私のこと>
ユキ姉「って、それはわかったけど、いつまでもこんなところに入ってないで、出て来なさい。事情を聞こうじゃないの」
みちる「あ、え、えーと、その……は、はい」
ロッカーからみちるは出ようとするが、スカートの裾がロッカー内の何かに引っかかり破れてストンと落ちる。
みちる「はっ!?」
ユキ姉「えっ!?」
ハルカ「あ……」
みちる<いやあああああああああああああああああ>
◼️場面転換(芸能事務所/社長室)
テーブルの上の書類にサインをさせられるみちる。
日比野「さぁ、これで契約成立だ。君は今日からうちの事務所の一員だ、よかったねぇ、こんな大きな事務所に移籍できて」
みちる<うう……秘密を探りに来たはずが、大きすぎる秘密を知ってしまったわ……>
日比野「契約通り、ハルカの性別が男である事は、絶対に誰にも言ってはならない。いいね?」
みちる「はい…」
日比野「もし、ハルカのこの秘密を君からバラした事が判明するような事があるとすれば、君はこの芸能界だけでなく、日本からも追放する事になるからね?」
みちる「絶対にしゃべりません!!」
みちるは半泣き。
日比野、にっこり微笑んでとどめの一言をいう。
日比野「不法侵入は立派な犯罪だからね?」
みちる<こ、怖いよこの人!!>
ハルカ「もうそれくらいにして下さい、社長。何の確認もしなかったオレも悪いですし」
頭をガシガシと書きながら、上下真っ黒のパーカーとジャージ姿で社長室に入って来るハルカ。
アイドルの時と雰囲気が違って、完全に男すぎてみちるはそれがハルカだと気づかない。
みちる<だ……だれ? この男>
ハルカ「そろそろ限界なのかもしれないですよ。俺が男だって隠し通すのも……借金だって、もうとっくに返せてますよね?」
日比野「……大丈夫だ。誰かが漏らさなきゃ絶対にばれない。メイクと服装をちゃんとしていれば、お前は女にしか見えないんだから……ハルカ」
みちる「は……!?」
みちる<えっ!? これ、ハルカ!? 同一人物!?>
みちるはハルカをまじまじと見つめるが、ハルカは前髪で隠れている目でチラチラとみちるを見るが、すぐに目をそらす。
ハルカ「そ、それで、話ってなんですか? 俺もう、寝たいんですけど……」
日比野「なに、簡単な話だよ。この不法侵入者————栗原みちるを寮に案内してやってくれ」
ハルカ「……寮に? なんで?」
日比野「お前の秘密を知ったんだぞ? しばらく俺の監視下に置く。お前の部屋に空き部屋があるだろ?」
みちる「え、ちょっと、待ってください……」
日比野「今夜からそこに住まわせる。お前たち、一緒に暮らしなさい」
みちる<な、なんですと!?>
(第1話 おわり)
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