第5話

▶第2話のシナリオ



◼️場所(寮/リビング)


みちる<まさか……こんなことになるなんて>


気持ちがついていかないみちるをよそに、ハルカ淡々と寮の説明をする。


ハルカ「自分の部屋以外は、共同になるので、自由に使ってください。冷蔵庫の中のものも、自由にどうぞ。全部経費なので……」

みちる「は……はい」

みちる<寮ってどんなところかと思っていたけど、普通に綺麗だし、しかも、事務所の最上階なのね。すっごい綺麗……私の家よりずっといいじゃない>


綺麗な夜景が大きな窓から広がっているのを見て、少し感動するみちる。

ハルカ、みちるが使う部屋を指差す。


ハルカ「みちるさんの部屋はこっちです。ベッドと机もあるので、き……」

みちる「き……?」

ハルカ「あとは着替えさえ用意すれば、生活するのに支障ないです。でも……その、社長の話だと、練習室以外で外に出るのはしばらく禁止みたいなので……」

みちる「え? なにそれ、聞いてないんだけど!? 自由に出歩けないってこと!?」

ハルカ「誰かが一緒なら大丈夫かと……それに、この部屋には監視カメラはないですけど、玄関を出たらビル内全部監視カメラついてるので……」

みちる<なによそれ!! それじゃぁ軟禁されてるようなものじゃない!!>


真っ青になるみちるに申し訳なさそうにするハルカ。


ハルカ「仕方がないじゃないですか……みちるさんが俺の秘密を知っちゃったせいなんです。秘密保持のためです。それに社長も、この期間にみちるさんの歌とダンスのレベルを徹底的にあげるって言ってました」

みちる「なにそれ、私の歌とダンスが下手だと?」

ハルカ「そういうことじゃなくて……! 飼殺しにするわけではないので、しばらく我慢してくださいってことです。今のままだと、仕事なにもないでしょう?」

みちる「それは……そうだけど」

みちる<そうよ。なんの仕事も来てないわ。全部あんたに取られたからね!!>


ハルカを睨みつけるみちる。


みちる<まだ信じられない。ライバルだと思ってたハルカが、実は男だったなんて……>


ハルカ「【HERO】に所属する限り、一定のレベルになるまでレッスンは必須なんです」

みちる「……わかったわ」

みちる<そうね、確かに、ムカつくけどハルカの歌は上手いし、ダンスもまぁ……>

ハルカ「それに、もし途中で逃げたら芸能界から完全追放されますよ」

みちる「そ……それは困るわ!!」

ハルカ「それは俺も困ります。なので、頑張ってください」

みちる「……なんでハルカも困るの?」


ハルカみちるから顔をそらして、答えない。


みちる<なによ……なんで答えないの?>


みちる「まぁ、いいわ。それで、他には?」

ハルカ「他?」

みちる「あなた以外に、この寮に住んでる人はいないの? もう一つ部屋があるみたいだけど」

ハルカ「あれも空き部屋です。このフロアだけなら、俺だけですよ」

みちる「え……?」

ハルカ「下の階になら練習生がいますけど……俺が男だって、知ってる人しかこのフロアには入れないんです」

みちる<な、なんですって!?>


そこへチャイムが鳴り、ユキ姉と大きなスーツケースを二つもった矢作が現れる。


みちる「や……矢作さん!? なんで、どうしてここに!?」

矢作「俺も追い出されたんだよ……マネージャーの監督責任の問題だって!! お前と一緒に【HERO】に移籍させられたんだ」

みちる「そ……そんな!」


矢作荷物を置いて、ハルカの方を見る。

ハルカ、睨まれてびくりと肩が跳ねる。


矢作「本当に……本当に……男なんだね? ハルカちゃん」

ハルカ「え……? はい」

矢作「くそぉぉぉぉっ!! 昨日写真集買ったばっかりなのに!! なんで男なんだよぉぉぉぉ!!」


みちる<ファンだった!! 矢作さん、めちゃくちゃハルカのファンだった!!>



大泣きする矢作の頭を、ユキ姉が殴る。


ユキ姉「うっさい!! 黙りなさい!!」

矢作「だって……だって、先輩!! こんなことって、こんなことってあります!? あんなに可愛いのに、俺の理想そのものだったのに……男って!!」

ユキ姉「何度も説明したでしょう!? 事情があるのよ!! 泣いてないで、仕事しなさい、仕事!!」

矢作「は、はい……すみません」


矢作涙をぬぐいながら荷物をみちるが使う部屋に運び入れる。

重そうなのでハルカも手伝う。


ユキ姉腕を組み、ハルカを見つめながらみちるに言う。


ユキ姉「……こんなことになってごめんなさいね。いくらあなたが秘密をしってしまったとはいえ、軟禁状態だし、突然知らない男と一緒に住むことになって」

みちる「い、いえ。元はと言えば私が、その……不法侵入したせいですから」

みちる<まさかこんな大きな秘密があるなんて、思ってなかったし……>

ユキ姉「まぁ、多分大丈夫だとは思うんだけど……もし何かあったらいつでも私に言ってね」


ユキ姉、みちるに自分の名刺を手渡す。


みちる「何かって……?」

ユキ姉「ハルカに襲われたらよ。理由わけあって美少女アイドルやってるけど、一応、男の子だし」

みちる「え……?」

ユキ姉「それに、あの子、あなたのファンなのよね。デビューする前から」

みちる「ファ……ええっ!?」




◼️場面転換(寮/洗面所)


服を脱ぎ、風呂に入ろうとしているみちる。


みちる<いやいや、ありえないでしょ。ファンとか……意味わかんないし。ハルカは私の居場所を奪ったライバルなのよ? それが、私のファンとか、マジでありえないでしょ。しかも女装してんのよ? それもあんなに完璧に。襲われるとか、そんなわけないじゃん。恋愛対象も男でしょ? きっと、あのマネージャーさんの勘違いよ————>


一人納得しながら、風呂場のドアを開けるみちる。

体を洗っているハルカと目があった。


ハルカ「…………」

みちる「…………」


ハルカもみちるも目をパチパチさせながら視線を下に落とす。

一瞬間が空いて、二人同時に叫ぶ。


ハルカ&みちる「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」



みちる<もう無理……なにこのデジャブ>




(第2話 おわり)

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