第8話 文化祭に行く予定についての話をしよう
まさかこの時期にやってる文化祭ってのが陽菜の通ってる東栄高校の創立祭だったとは…。どんな言い訳をしようか。
「行くべき。こんな時期にやってる文化祭なんてそうないから」
「それもそうだな…。行くか…」
「ん。じゃ、文化祭でどんなイベントを起こすかの会議を続けよ」
俺と亜優は頓挫している文化祭の内容を一旦置いて、どのようなイベントを起こすかだけでも決めようと会議を行っていた。
「ミスコンでの小夏の優勝、春樹と冬華の文化祭デート、秋葉の片思い…、あとは水瀬先輩パート…、冬休み編の導入って感じ」
「春樹くんは冬華さんと付き合うの?」
「んや。まだ決めてない。あくまで文化祭を一緒に巡るってだけ」
「むふー、誰と誰がくっつくのか楽しみ…」
「俺も考えあぐねてるとこ」
ほんと、誰と誰を付き合わせるか…。多分、人気投票なんてものがあるなら順位は巻ごとに変動を繰り返すだろう。そう予想するくらい、ヒロインたちが好きだ。小夏は別だが。愛している。
「あとは、雨宮くんのカップリング…?」
「それは小夏とに決まってるだろ」
「…正直驚いた。先生なら『小夏とだけは絶対にありえない』って言うもんかと…」
「俺が描きたいのはほんとに居そうな理想の妹だよ。彼氏の一人も作らずに、『お兄ちゃんお兄ちゃん』言って、甘えてきて。そんなの俺の理想の妹じゃない」
「先生、それ私への当てつけ?私彼氏いないけど」
「彼氏を作らないのが悪い訳じゃなくて、俺の理想の妹は、彼氏を持っていながら兄ともちゃんと話して、それでいて可愛いって感じ」
「先生、それって理想って言うか、彼氏いる以外は普通の妹なんじゃ…」
亜優はまるで可哀想な人を見るかのように俺を見た。そ、そうか…、ディスコミュニケーション決め込んでる陽菜が基準だから、とんでもなく妹の理想の敷居が低くなってるのか。
「今思えばそうかもな」
「…なら、私が満たしてあげよっか?」
「何言ってんだよ」
「私が、先生の妹になる」
「そんな形だけの妹、俺はいらないよ。お前の気持ちは嬉しいけどな」
人の妹になる、ねぇ。俺は義妹はいいと思うが、現実ではあまり認めたくないのだ。認めたくないというか、俺自身にできて欲しくないというか…。
「そ、そっか…。ごめんね、変なこと言って」
「いいよ。気にしてないから。でも、妹か。変だな。妹にしてくれなんてさ」
「ぶり返さないで。それに、先生が変だから、それに合わせたんだよ」
「じゃあ常識人基準で言うとどうなんだ?『妹になる』って」
「んー、彼女にしてください?」
「彼女ねぇ、よくそんなこと平然と言えるな」
「意外。もっと赤くなると思ってた」
「まぁ、俺らは恋人よりも深いビジネスパートナーって関係だろ?」
「そだね…」
「煮え切らない様子だな」
「別にー」
結構互いに分かりあったような気もしていたが、俺はまだこいつのことを理解できてないらしい。
「でも、これでまた行き詰まりだなぁ…、文化祭の内容によっては今後の物語に大きく影響するからな」
「りょか。じゃあ、少し息抜きする?幸い、今日の降水確率は0%。街に繰り出そ」
「そうすっか。原稿も書き終わったし、今日は休むかー」
「おー」
偽理兄弟のかくしごと @raito378
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