第23話

「ただいま戻りました~」

「あ、お姉ちゃん! お帰りなさい!」


 メンバーと『奈落』で別れ、一人、教会に戻ってきた私を妹が元気に出迎えてくれる。


「あら、シエル、こんな時間に帰ってきて、お仕事は大丈夫なのですか?」

「あ、はい、今日は早上がりだったので」


 本当はブライト達を始末した後も後処理などで一睡もしておらず、アズルから強制的に休暇をもらったのだが、当然、一般人のラナ達には言えないため、笑ってごまかす。


「あ~! 昨日、帰ってこなくて、ラナちゃんを泣かせたシエルさんだ~!」

「り、リーエルさん!? それは内緒って、言ったのに!」

「そうでしたっけ~?」


 いつの間にか私の後ろに立っていたリーエルの暴露に、ラナが慌てて口をふさごうとするも、のらりくらりと躱される。


「あはは……ごめんね、ラナ、昨日はちょっと仕事が長引いて、学園に残っていたんだよ」

「べ、別に泣いてないから!」

「うんうん、分かっているよ」


 頬を赤らめ、目を逸らすラナの頭を撫でていると、私の肩に一羽の鳥が降り立った。


「あ、お姉ちゃん、肩に……」

「お、もう出来たのか」


 何が出来たの? と顔をキョトンとさせるラナを横目に、私は鳥の足にくくられていた筒から紙を取り出す。


『帝国に王国の害虫が潜んでいる可能性有り』

『機を見て、フラン、グエン、レイの三人を帝国に潜入させ、調査をしてもらう』

『残りの三人は、引き続き、フィリップの護衛を』

『詳細は、また後日、連絡する』


「……」


 送られた内容から推測するに、王国の貴族が他国に潜入しているため、なんらかの調査が必要となったのだろう。


 ブライトや、その仲間を尋問した内容をまとめて、私達に送ってきたのだろうが……


「相変わらず、仕事が早いね~」

「シエルさん、その手紙にどんな内容が?」

「しばらくの間、ウチの教え子を帰国させろ、だそうですよ」


 内容が気になるのか、興味津々に問いかけて来るリーエルに、私は真実と嘘を混ぜて、返答する。


「え、じゃ、じゃあ、お姉ちゃんも戻っちゃうの……?」

「ううん、お姉ちゃんは戻らず、こっちに残るよ」

「よ、よかった~」


 私も帰国するのかと危惧していたラナは、ほっと息をつく。


「ラナちゃんは、いつまでもお姉ちゃん離れが出来ないでしょうね~」

「う、うるさい!!」

「リーエルさん、ラナを揶揄い過ぎないでください」

「ごめんごめん~」


 平謝りするリーエルを、ラナが「今度は許さない!」と襲いかかるのを一瞥し、私は外に出て、空を眺める。


(思いのほか、大変な『依頼』になりそうだな~)


 これまでの事、そして、これからの事に思いを馳せながら、私は一人、静かに微笑む。


「けど、関係ないよね」


 胸に手を当てて、決意の光を瞳に宿しながら、空に向かって宣誓する。


「たとえ、この身が腐り落ちようとも、愛する者のために、私は戦い続ける!」


 正義のヒーローなんかになるつもりはないし、なれるはずもない。

私は罪人、この手で数多の貴族を殺してきた、罪深き人間。


 だから……



「私は、いや、私達はこの『悪』を貫いてみせよう!」



―――――――――



 ――後の世界で、彼女たちは、こんな言葉と共に記録に残るのだった――


『彼女らは、『正義』に非ず』

『なれど、その『意志』の強さは、世界に存在する数多の『英雄』の誰よりも強かった』

『故に、彼女らは、人々の間で、こう呼ばれるようになった』



 ――大罪の『英雄』――と。


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大罪の英雄 苔虫 @kokemusi

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