第3話
……い……ちゃ…て!
…誰かの声が聞こえる…
…なんか、デジャヴだな
少し前のやり取りを思い出し、そんな事を思う
あのクソ神ぃ…転生先を間違えやがってぇ…絶対に許さんぞぉ…(ガチギレ)
「お兄ちゃん起きて!」
「うおっ耳が!———いってぇ!」
いきなり耳元で大声を出され、ベッドから転げ落ち、そのまま床へ激突する
…なんか俺、悪いことばっかり起きてない?
そんなことを考えていると、声を張り上げたであろう主…黒髪に所々黄色の髪混ざっているサイドテールの少女が俺の腕を掴んできた
「お兄ちゃん、起きたなら早く学園に行く準備するよ!今日から一緒に登校できて楽しみにしてたんだから!」
「あ、あぁ…だけど少しは労わってくれ…ベッドから落ちて腕が痛い…」
俺をお兄ちゃんと呼ぶ少女が誰なのかは知らないが…とりあえず話を合わせよう
この感じだと俺は転生よりも憑依のようだし
あの駄神、言ってたことと起きてることが全然違うじゃねぇか…そもそも転生した世界が違うらしいし
少女に引っ張られながらそんなことを考えていると、リビングであろう場所で椅子に座らされていた
い、いつの間に…!?もしやこの少女、できる…?
「はいお兄ちゃん!もう時間がないから急いで食べてね!私は先に準備してるよ!」
そう言って少女は俺の前に鮭の塩焼きにご飯と味噌汁というThe・和食定食を置いてどこかへ行った
先程の歩いてきた階段からドタドタと聞こえるのでおそらく2階へ行ったのだろう
…それにしても、これは早く食べられなくない?
俺の前に置かれた和食定食はどれも美味しそうに輝いているが…量が多い
鮭は切り身だがイメージする切り身の2倍はあるし、ご飯も茶碗二杯分が盛り付けされてる
味噌汁に至っては丼茶碗である…この量を朝からはキツいって…前の体の持ち主は毎回これだけの量食べてたんか…?持ち主は前世横綱…?
「…とりあえず食べよう…食べ物を粗末にしたくないし」
鮭の切り身を崩し、ご飯に乗せて食べる…ッ!?
「う、美味い…美味すぎる…だと…!?」
切り身は丁度いい塩梅の塩加減でバター醤油が香ばしい…白米はふっくらもちもちとして尚且つあまり米に水気を感じない
鮭とご飯の相性が絶妙にマッチして恐ろしいほど箸が止まらない
「み、味噌汁は……あっ美味い」
味噌汁にはネギやわかめ、玉ねぎに豆腐と具沢山であり、さらにあさりらしき貝まで入っているという豪華しようだ
具材のどれもがバランスを取り合い、まるで全員が主役だといわんばかりの味の暴力…そして味噌汁で土台となっている味噌も少しの甘みがありながらも具材の邪魔をしていない…
とりあえず言える一言は…美味い。それだけ
「ご馳走様でした…」
気づけばキツいと思っていた量の朝ごはんもすんなりと胃に入った…こりゃあんだけの量食べれるのもわかる…
てかこれだとこの世界はグルメ系の世界…?だとしたらあんなに美味いのも納得だが
「お兄ちゃん!食べたなら急いで着替えて!もうそろそろ家出ないと遅刻するよ!?」
「あ、あぁ!すぐ着替える!」
少女が再びリビングへとやってきて、俺に着替えを急かす
俺も慌てて体の持ち主の自室へ戻り、それっぽい制服へと着替えた
「ふむ…もしかして前人は名門校に通っていたのか?」
部屋にある姿見で自身の姿を確認すると、所々にオシャレな刺繍が織り込まれた高級感を放つ服を着こなすイケメンが立っていた
イケメンに高級感のある服なんて名門校だ…俺のラブコメで培った勘がそう告げている
「…てか遅刻しそうなんだった!急げ!」
遅刻という言葉を思い出し、慌てて準備するが、肝心の学校鞄らしきものが見当たらない
「こいつどこに置いたんだよ…!」
クローゼットの中やベッド下などを探すが見当たらない…諦めて俺は下に降りると、二つの鞄を持つ少女が玄関で待っていた
…少女、お前だったのか
某児童文庫本のセリフのようなことを考えながら少女へ近づく
「お兄ちゃん遅い!ほら、早く行くよ!」
「はいはい、わかった」
少女と一緒に「行ってきます」と言って俺は自宅を後にした
鬼畜エロゲという世界でどうしてもラブコメが見たい俺 @azrira
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